mpv.netは高機能な動画再生アプリです。プライバシー保護という観点からも優秀です。ただし使い方がやや難しく、情報も分散しています。この記事では、mpvおよびmpb.netの使い方と、基本的なカスタマイズ方法について解説いたします。
「mpv」および「mpv.net」の概要
mpv、mpv.net、VLC media playerの違いを解説します。
mpvとは
「mpv」は、ほとんどの動画/音声フォーマットを再生できる、高性能なメディアプレイヤーです。
GPLライセンスにて開発されており、完全に無料で利用できます。
とても高性能ですが、コマンドラインやキーボード操作が基本となっているため、一般ユーザーにはややハードルが高いです。
一方で、余計なことをしないので、プライバシー保護を重視する方にも向いています。
WIndowsやmacOSでも利用できますが、基本的にはLinux向けアプリです。
スマホでは利用できません。(派生版はあるようです)
開発の歴史
2000年頃、MPlayerというコマンドライン中心のメディアプレイヤーの開発が始まりました。
当時としては珍しく、標準で多くのフォーマットに対応していたため人気になったものの、最新機能の取り込みには消極的でした。
2010年頃、別チームが、その改良版のmplayer2の開発を始めました。
しかしmplayer2は、本家MPlayerとの関係が悪化し、短期で開発終了となりました。
mpvは、MPlayerとmplayer2を統合し、最新機能に対応しつつも、GUIを排除してCUIに戻したものです。
mpv.netとは
「mpv.net」は、mpvをGUI対応して使いやすくした、Windows専用アプリです。
本家mpvと、ほぼ同じ機能、同じカスタマイズ性を備えています。
Windowsユーザーであれば、こちらの方をおすすめします。
mpv.netとVLC media playerの違い
mpv.netと同じく、プライバシー保護性能の高い動画再生アプリとして、VLC media playerがあります。
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プライバシー重視の動画再生アプリ? VLC media playerの安全性と危険性
2025/8/9 メディアプレイヤー
無料の動画再生アプリを探しているのであれば、まずはVLC media playerが第一候補にあがります。長い歴史があり、個人情報を収集することもありません。ただし、使用する際のいくつかの注意点があり ...
その違いを比較すると、以下のようになります。
- VLC media player
- 初期設定のまま、大抵のことができる
- 高度なことをしようとすると限界がある
- 動画再生だけでなく、動画配信やフォーマット変換もできる
- mpv.net
- 初期設定では、できることが限られている
- 高度なカスタマイズが可能
- 配信や変換はできず、再生のみ
基本的には、VLC media playerの方が初心者向けで、mpv.netは中~上級者向けです。
プライバシー保護という面から言うと、VLC media playerはいろいろなことができる分、制御が難しいというところがあります。
mpv.netは再生しかしないので、より安全です。
mpv.netの使い方
mpvとmpv.netのインストール、使い方、カスタマイズ方法について解説します。
mpvの使い方
mpv.netの前に、mpvの使い方を簡単にご紹介します。
雰囲気だけ感じていただければと思います。
インストール
「https://mpv.io/」にアクセスし、「Installation」をクリックします。
Windowsの場合、いろいろなやり方がありますが、ここでは「Windows builds by zhongfly (git)」をクリックします。
3つのファイルがありますので、どれか1つをダウンロードします。
ほとんどのWindowsユーザーは、「mpv-x86_64-v3~」となります。
「Intel Haswell(2013)」「AMD Excavator(2015)」より古いCPUを使用している場合は、上の「mpv-x86_64~」の方を選択します。
タブレットPCを使用している場合は、「aarch64」の可能性もあります。
Windowsの「設定」-「システム」-「バージョン情報」-「システムの種類」からご確認ください。
ダウンロードしたファイルは「7z」で圧縮されています。
解凍ソフトをお持ちでない場合は「7-Zip」をおすすめします。
適当なフォルダに展開し、「mpv.exe」をダブルクリックして実行します。
使い方
初回起動時に、Microsoft Defenderの警告が表示された場合は、「詳細情報」をクリックします。
「実行」をクリックします。
起動するとこのような画面となります。
「ファイルから開く」など、メニューバーはありません。
動画ファイルを画面上にドラッグ&ドロップすると再生できます。
動画が再生されましたが、停止ボタンすらありません。
「設定ファイル」「コマンドライン」「キーボードショートカット」で操作をするというのが基本となるので、なかなかハードルが高いのではないかと思われます。
mpv.netの使い方
ということで、GUI拡張をしてマウス操作ができるようにした、mpv.netの出番となります。
インストール
「https://github.com/mpvnet-player/mpv.net」にアクセスし、「Releases」をクリックします。
ベータ版の「Pre-release」と安定版の「Latest」がありますが、Latestの方が良いでしょう。
その中に、ポータブル版とインストーラー版があります。
インストール作業不要のポータブル版の方をおすすめします。

ポータブル版の場合、ファイルを展開して「mpvnet.exe」をダブルクリックして実行するだけです。
使い方
起動すると、このような画面となりますが、mpvと同じですね…?
しかし、右クリックからメニューが表示されるようになっています。
マウス操作で、ファイルから開くことも可能です。
初期設定で日本語にも対応しています。
mpv.netのカスタマイズ
動画を再生するだけであれば以上ですが、mpv.netは無限にカスタマイズをすることができます。
プライバシー保護を考えるのであれば、外部プラグインの追加はしない方が良いかもしれませんが、最低限、再生履歴の無効化はしておくことをおすすめします。
構成フォルダの作成
「設定」-「構成フォルダを開く」とすると、mpv.netの設定ファイルが保存されるフォルダが開きます。
これがどこにあるかというと、「C:\Users\【ユーザー名】\AppData\Roaming\mpv.net」となります。
インストーラー版であればこれでいいと思いますが、せっかくポータブル版を選んだのにAppDataフォルダを使いたくはありません。
「mpvnet.exe」と同じ階層に「portable_config」というフォルダを作成すると、そちらの方が優先されるようになります。
カスタマイズするのであれば、作成しておくことをおすすめします。
フォルダを作成後は、アプリを再起動してください。
再生履歴の無効化
初期設定では、「ファイル」-「最近のファイル」に再生履歴が残ります。
これを無効にするには、「設定」-「構成エディターを表示」をクリックします。
「recent-count」に0を入力し、画面を閉じます。
再生履歴は、オリジナルのmpvにはないmpv.netの独自機能なので、設定は「mpvnet.conf」ファイルに保存されます。
キーボードショートカットの変更
キーボードショートカットを変更するには、「設定」-「入力エディターを表示」をクリックします。
キーボードショートカットの一覧が表示されるので、簡単に変更することができます。
設定内容は、「input.conf」ファイルに保存されます。
操作パネル(OSC)の変更
mpv.netでは、画面下部の操作パネルのことを「On Screen Controller(OSC)」と呼びます。
標準では以下のようになっており、馴染みにくいかもしれません。
これを変更してみたいと思いもます。
フォルダ作成
「portable_config」フォルダの中に、「fonts」「scripts」「script-opts」という3つのフォルダを作成します。
また、「mpv.conf」ファイルが無ければ作成しておきます。
mpv.confの編集
mpv.confをメモ帳等で開き「osc=no」を追記します。
標準のOSCを無効にするという意味です。
ModernZのダウンロード
カスタムOSCは色々公開されていますが、今回は「ModernZ」を使用してみたいと思います。
「https://github.com/Samillion/ModernZ」を開き、「Release」をクリックします。
「fluent-system-icons.ttf」「material-design-icons.ttf」「modernz.conf」「modernz.lua」の4つのファイルをダウンロードします。
thumbfastのダウンロード
シークバーを動かした時にサムネイルが表示されるように「thumbfast」も使用します。
「https://github.com/po5/thumbfast」を開きます。
こちらには「Release」ページが用意されていません。
「thumbfast.conf」「thumbfast.lua」の2つのファイルを必要なのですが、ダウンロードの仕方によっては、HTMLファイルになる可能性があるのでご注意ください。
「Download raw file」からダウンロードするようにします。

ファイルの配置
ダウンロードしたファイルを、以下のように配置します。
- portable_config
- fonts
- fluent-system-icons.ttf
- material-design-icons.ttf
- scripts
- modernz.lua
- thumbfast.lua
- script-opts
- modernz.conf
- thumbfast.conf
- fonts
アプリの再起動
設定を反映させるために、mpv.netを再起動します。
画面下部のデザインが変わって、シークバーにサムネイルが表示されれば成功です。
さらに詳しく
カスタマイズについてより知りたい場合は、下記のサイトをご参照ください。
まとめ mpv.netとは
mpvは、コマンドラインで操作ができる、高機能なメディアプレイヤーです。
基本機能では再生しかしないので、プライバシー保護性能も高いです。
mpv.netは、Windows向けに、GUI機能を拡張したmpvです。
見た目の変更も含め、高度なカスタマイズが可能となっています。
ただし、情報がかなり分散しているので、なかなか扱いが難しいです。
基本的には、VLC media playerの方がはるかに簡単です。
VLCでは対応できない状況となった場合に、mpv.netも検討すると良いでしょう。