アカウント登録などでメールアドレスの入力が必要だが、自分のメールアドレスを公開したくないという場合に便利なサービスが、AnonAddyです。AnonAddyは、仮のメールアドレスを発行し、自分のメールアドレスに転送してくれるサービスです。受信するだけでなく、送信も可能です。この記事では、AnonAddyの概要と、基本的な使い方について解説します。
AnonAddyとは
AnonAddyの使用目的、料金プラン、類似サービスとの違いについて解説します。
AnonAddyの概要
「AnonAddy」とは、メールアドレスのエイリアス(別名)を作成し、本来のメールアドレスに転送するサービスです。
これにより、本来のメールアドレスを隠し、プライバシーとセキュリティを確保することができます。
オープンソースで開発されており、基本的な機能は無料プランでも利用できます。
AnonAddyは、イギリスを拠点にしていると思われますが、運営会社の詳細は公開されていません。
「Addy」とは「Address」を省略したスラングで、「AnonAddy」を日本語に訳せば「匿名メアド」と言ったところです。
AnonAddyの用途
AnonAddyの使い道をご紹介します。
できること
スパム対策
一時的なメールアドレスが必要になった時に、異なるエイリアスを利用することで、スパムの原因を特定することができます。
また、必要がなくなったらエイリアスを無効化することで、スパムをブロックすることができます。
プライバシーの保護
アカウントの登録時などに、本来のメールアドレスではなくエイリアスを使用することで、個人情報を保護することができます。
情報漏洩した際のリスク軽減にもなります。
できないこと
完全な匿名性
AnonAddyを使用することで、匿名性は高まりますが、完全な匿名性を保障するものではありません。
IPアドレスなどの情報はメールサーバーに記録されます。
匿名性をより高めるには、VPNやTorを併用するとよいでしょう。
トラッキングの回避
AnonAddyはメールを転送するだけなので、本文内にトラッキングピクセルやトラッキングリングが埋め込まれている場合、回避することができません。
実際に受信するメールクライアントで対応する必要があります。
フィッシング詐欺の回避
同様にフィッシング詐欺などにも対応できません。
最近は生成AIによって詐欺メールの完成度が高まっているため、リンクをクリックする前によく確認をする必要があります。
法的な制限の回避
AnonAddyはイギリスの法律に基づき運営されているため、政府機関からの開示要求に応じる可能性があります。
より高度なプライバシー保護が必要な場合は、セルフホスト版を利用することができます。
AnonAddyの料金
AnonAddyの料金プランと機能の違いをご紹介します。
AnonAddyは柔軟な設定が可能であるため、用語と機能が分かりにくいところもあります。詳しくは後述します。
Free | Lite | Pro | |
---|---|---|---|
料金 | 無料 | 1USD/月 | 3USD/月 |
転送先メールアドレス | 1 | 5 | 10 |
標準エイリアス | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
共通ドメインエイリアス | 10 | 50 | 無制限 |
共通ドメイン | 2 | 6 | 7 |
カスタムドメイン | ー | 1 | 20 |
追加ユーザーネーム | ー | 5 | 20 |
ルール | ー | 5 | 20 |
送信 | 可能 | 可能 | 可能 |
返信 | ー | 50/日 | 200/日 |
転送可能データ量 | 10MB/月 | 100MB/月 | 無制限 |
AnonAddyの類似サービス
メールの転送サービスは、AnonAddy以外にも多数あります。代表的なものをご紹介します。
SimpleLogin
SimpleLoginは、AnonAddyとよく似たエイリアスサービスです。
何が違うかは後述しますが、インターフェイスの好みで選んでしまってもよいと思います。
2022年に、下記のProtonグループの一部となりました。
SimpleLoginとProtonMailの連携は、便利なようでよく分からない
2025/1/14 Proton
SimpleLoginは、匿名メールエイリアスを作成することで、ユーザーのプライバシーを保護するサービスですが、暗号メールを提供するProtonグループに買収されたことにより、より利便性が高まったと言 ...
Proton Mail
Proton Mailは、プライバシー保護を重視した暗号メールサービスです。
エイリアス機能も持っていますが、柔軟性はAnonAddyに劣ります。
転送ではなく、メールサービス本体です。
暗号メールの代表格ProtonMailの安全性と危険性
エンドツーエンドで暗号化されるメールサービスとして、おそらく一番有名なものがProtonMailです。ProtonMailは確かに安全なメールですが、実際の仕組みはかなり複雑なので、理解していないとむ ...
Firefox Relay
Firefox Relayは、Mozillaが提供するシンプルなエイリアスサービスです。
エイリアス5個までであれば無料で使用できます。
Mozillaアカウントのついでに利用したい時に便利です。
DuckDuckGo Email Protection
DuckDuckGo Email Protectionは、DuckDuckGoが提供するメール保護サービスで、エイリアスとトラッキング削除機能を備えています。
無料で、無制限に使用できます。
AnonAddyの特徴とSimpleLoginとの比較
上記の類似サービスと比較した、AnonAddyの特徴をご紹介します。
オープンソース
AnonAddyとSimpleLoginは、オープンソースで開発されているため、透明性が高いです。
セルフホスト可能
AnonAddyとSimpleLoginは、セルフホストをすることも可能なので、第三者にデータが渡ること無く、完全にプライベートな環境で運用することができます。
SimpleLoginとの違い
ではAnonAddyとSimpleLoginは何が違うかということですが、基本的な使い方をするだけであれば、そんなに違いはないと思います。
無料プランで、大量のエイリアスを作成する予定があるのであれば、AnonAddyの方をおすすめします。ただし、帯域制限はあります。
AnonAddy | SimpleLogin | |
---|---|---|
拠点 | イギリス | フランス スイス |
無料プラン | あり | あり |
有料プランの料金 | Lite:1USD/月 Pro:3USD/月 | 3USD/月(年払い) 4USD/月(月払い) |
無料プランのエイリアス数 | 無制限 | 15 |
無料プランの帯域制限 | 10MB/月 | 無制限 |
有料プランのカスタムドメイン | 20 | 無制限 |
SaaSの設定 | やや複雑 | シンプル |
セルフホストの設定 | シンプル | やや複雑 |
AnonAddyの使い方
AnonAddyのアカウント登録、2種類のエイリアスを使った受信、送信、転送について解説します。
アカウント登録
AnonAddyのアカウント登録は、(多分)やり直しができない部分があるので、注意が必要です。
ブラウザで「https://addy.io/」を開き、「Sign Up」をクリックします。
「ユーザー名」と「メールアドレス」を入力するのですが、重要な意味を持つので、よく考えて登録しましょう。
「Username」は、単なるログイン認証だけでなく、メールアドレスの「xxx@username.anonaddy.com」または「yyy@username.anonaddy.me」の部分に使われます。Usernameは後から変更できないようです。
メールアドレスは、転送先のメールアドレスです。メールアドレスは変更できます。
メールアドレスが受信可能か、認証が行われます。
「大量登録しない」「無料アカウントを複数登録しない」「スパムに使用しない」という注意書きがあります。
標準エイリアス
AnonAddyの無料プランでは、「Standard Aliases(標準エイリアス)」と「Shared Domain Aliases(共通ドメインエイリアス)」の2つが利用できます。(カスタムドメインエイリアスは有料)
標準エイリアスは、アカウント登録をすれば自動的に使用できます。
例えば、usernameを「yamada123」で登録したとすると、「@yamada123.anonaddy.com」「@yamada123.anonaddy.me」の、@の前は何でもよく、自動的に全て転送されるようになります。(キャッチオール)
- google@yamada123.anonaddy.com
- apple@yamada123.anonaddy.com
- amazon@yamada123.anonaddy.me
など、何個でも無制限に使用できます。(転送量の制限はある)
事前に設定が不要というところが便利な点です。
逆に、キャッチオールを停止したいという場合は、有料プランが必要となります。
共通ドメインエイリアス
「yamada123」を隠したい場合は、共通ドメインエイリアスを作成します。
管理画面にログインし、「Aliases」をクリックします。
右上の「Create Alias」をクリックします。
無料プランの場合、ドメインは「anonaddy.com」か「anonaddy.me」の2つから選べます。
「@」の前は、ランダム文字列かUUIDを選べます。
ランダム文字列を選んだ場合は、8桁となります。
UUIDを選んだ場合は、「8-4-4-4-12桁」となります。
いずれの場合もランダムとなるので、任意の文字を登録することはできません。
送信
AnonAddyでは、受信するだけでなく、送信をすることもできます。
ただし、AnonAddyは転送をするだけなので、普段使っているメールアプリから、特殊な転送用のメールアドレスに対して送信するということになります。
転送用のメールアドレスを確認するには、「Aliases」画面の「Send」をクリックします。
送信先のメールアドレスを入力し、「Show address」をクリックします。
送信先のメールアドレスが表示されました。
「4ng9xxxx@anonaddy.me」から「test@mail.com」に送信する場合は、「4ng9xxxx+test=mail.com@anonaddy.me」に送信すればよい、ということになります。
事前に設定が必要ということではなく、ルールに従っているだけですが、最初は確認をした方がよいでしょう。
返信
メールを返信する場合も、宛先のメールアドレスは上記の通りなのですが、無料プランの場合は返信機能が制限されています。
メールアプリから「返信」をしようとすると、下記のようなエラーが返り、送信できません。
返信ではなく、別の新規メールとして「送信」をすることはできます。
スマホアプリ
AnonAddyは、Webアプリだけでなく、スマホアプリも公開されています。
ただ、私が確認した限りは、Webに比べて便利な機能が追加されているということもなかったので、特に利用する必要はないのではないかと思います。
UIがスマホに特化しているので、操作しやすいといことはあるかもしれません。
ストア経由で課金をすると割高となりますのでご注意ください。
AnonAddyのまとめと使ってみた感想
実際に使ってみたところ、キャッチオールが結構便利で、普段使いしてもいいかなと思いました。課金をする程ではないのですが、無料でも十分に使えるのではないかと思います。
ただし、用語や管理画面が少し分かりにくいので、そこさえ乗り越えることができれば、というところです。