多くのAIサービスは、特定の質問をブロックするだけでなく、国家のイデオロギーによって回答が歪められている危険性が指摘されています。Venice AIは、一切の検閲をせずに、自由にAI利用することを目的としたサービスです。ただし実際には、完全に自由ということでもないようです。この記事では、Venice AIのコンセプトと、基本的な使い方、安全性について解説します。
Venice AIは本当に安全?
Venice AIのコンセプトと、料金プランの違い、安全性と危険性について解説します。
Venice AIとは
「Venice AI」は、検閲されず、履歴も保存しない、プライバシー保護を重視したAIサービスです。
多くののAIサービスは、特定の質問に対する回答が意図的に制限されていますが、Venice AIでは何も制限せず、自由なAI体験を提供することを目的としています。
いわゆる、脱獄されたAIを使用できるということです。
また通信内容を暗号化し、サーバーには保存しないことで、プライバシーを保護しています。
履歴はブラウザ内に保存されるので、別のブラウザを使い同じアカウントでログインしたとしても、同期はされません。
スマホアプリはなく、ブラウザからのアクセスのみです。
「Venice」という名称は、独立都市国家として栄えた「ヴェネツィア共和国」に由来していると思われます。
暗号通貨思想のAI
Venice AIは、2024年にErik Voorhees氏によって公開されました。
Erik Voorhees氏は、アメリカ出身の実業家で、ビットコインの初期の頃から反体制的な思想家として知られています。
2012年に「Satoshi Dice」という、ビットコインを使用したギャンブルサイトを開発し、その後、売却しました。
2014年に「ShapeShift」という、匿名で利用できる暗号通貨交換所を開設します。しかし、マネーロンダリングを助長していると批判を受け、規制が強化されました。
そして2024年に、中央集権的ではない、分散型で、個人が自由に利用できるAIプラットフォームとして「Venice AI」を公開します。
初期の暗号通貨が目指した理想を引き継いだAIサービスと言えるでしょう。
Venice AIの料金
Venice AIには、次の3つのアカウント種別があります。
- ゲスト(アカウント登録なし)
- 無料(アカウント登録あり)
- Pro
機能 | ゲスト | 無料 | Pro |
---|---|---|---|
料金 | 無料 | 無料 | $18/月 $149/年 |
テキストプロンプト | 15/日 | 25/日 | 無制限 |
画像生成 | 5/日 | 15/日 | 1,000/日 |
高度なAIモデル | ー | ー | ◯ |
キャラクター作成 | ー | ー | ◯ |
ウォーターマークなし | ー | ー | ◯ |
セーフモード無効 | ー | ー | ◯ |
その他、細かな設定 | ー | ー | ◯ |
API利用枠 | ー | ー | ◯ |
キャラクター作成とは、AIに性格や見た目を設定し、アバター化する機能です。
ゲストと無料アカウントでは、生成した画像にウォーターマーク(透かし)が入ります。
セーフモードとは、アダルト画像の生成を禁止する制限のことで、Proでは解除することができます。
その他Proでは、システムプロンプト、ネガティブプロンプト、パラメーターの調整などができるようになります。
VVVトークン
Venice AIでは、「VVV」という独自通貨を発行しています。
VVVトークンをステーキング(預け入れ)することで、APIの利用枠を報酬として受け取れます。
API利用枠は、普通に購入することも可能です。
完全に検閲されない訳では無い
利用規約やプライバシーポリシーを確認すると、何でも許可されている訳ではないことが分かります。
暴力、性的、プライバシーの侵害など、かなり詳細に禁止事項が書かれています。
また、米国の法的要請に従い、情報提供することも明記されています。
Venice AIが米国を拠点としてい以上、米国の法律に従うことは当然と言えます。
さらに創業者のErik Voorhees氏が、前プロジェクトの「ShapeShift」で、国際的な捜査機関から既に目をつけられているという点も大きいです。
技術的にも、暗号通貨のような分散管理ができている訳ではなく、中央管理的です。
理念は素晴らしいが、まだ発展途上と言えるでしょう。
VPNとの併用か、ローカルでの実行を推奨
Venice AIを安全に使用するならば、NordVPNのようなノーログポリシーのVPNを使い、さらにプライバシー保護を強化したブラウザでアクセスすることをおすすめします。
より確実には、外部サービスではなく、ローカル環境でAIを実行したほうが良いでしょう。
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Venice AIの使い方
Venice AIの基本的な使い方と、注意点について解説します。
アカウント登録
Venice AIは、アカウント登録なしでも使用できますが、アカウント登録することで、利用枠が増えます。
登録するには、右上の「Sign in」をクリックします。
「Create one here」をクリックします。
以下のアカウントが利用できます。
- Apple
- Discord
- Coinbase
- Web3 Wallet
- メールアドレス
暗号通貨IDを利用できるのは珍しいです。
おすすめの設定
アカウント登録をしたら、まず確認した設定を2つご紹介します。
テレメトリー収集の拒否
「App」設定の中に、テレメトリー(利用状況)の収集を無効にする設定があるので、オンにすると良いでしょう。
Venice AIは、プライバシー重視のAIを主張する割には、初期設定で有効になっているところが気になります。
データの保護
チャット履歴は、サーバーではなく、ブラウザのストレージ内に保存されます。
このデータは、ブラウザの機能によって、自動的に削除されることがあります。
消されないように保護するには、履歴欄の「⋯」をクリックします。
「Account Settings」をクリックします。
「Persist Storage」をクリックします。
ただし、これで実際に保護されるかは、ブラウザの種類や設定に依るので、あまり期待はできないようです。
消える前提で、別途エクスポートしておくことをおすすめします。
テキストチャット
無料版の場合、テキストチャットでは、次の2つのモデルが使用できます。
- Venice Uncensored(Dolphin Mistral 24B Venice Edition)
- Venice Medium(Mistral Small 3.1 24B)
これで、本当に検閲されないのか試してみたいと思います。
ChatGPT 4o
例えば、ChatGPTに「爆弾の作り方」を聞いても、回答を拒否されます。
これが一般的なAIの挙動です。
Venice Uncensored
Venice Uncensordでは、普通に回答してくれました。
Venice Medium
ところが、Venice Mediumの方では、回答を拒否されました。
こちらのモデルには、カスタマイズが入っていないためと思われます。
画像生成
無料版では、画像生成のモデルとして、以下の3つを利用できます。
- Venice SD35(Stable Diffusion 3.5 Large)
- FLUX Standard(FLUX.1 dev)
- HiDream(HiDream I1 Dev)
HiDream
HiDreamで、「花火」の画像を生成したところ、以下のようになりました。
ほとんど実写と思えるようなクォリティです。
しかし無料版の場合は、左下にウォーターマーク(透かし)が入ります。
セーフモード
無料版は、セーフモードという、アダルトフィルタが有効になっています。
これがかなり敏感なようで、特に意図していないのに、頻繁に引っかかります。
例えば「ビーチ」の画像を生成しようとしたところ、人物については何も指定していないのに、拒否されました。
透かしやフィルタはPORで解除可能
ウォーターマークやセーフモードは、有料のPROプランに登録すると、無効にすることができます。
まとめ Venice AIの使い方
Venice AIは、初期の暗号通貨コミュニティが掲げていた「中央集権から脱却し、自由を手に入れる」という思想を引き継いだAIサービスです。
検閲をせず、プライバシーを保護することを目的としています。
しかし現状では、理念に対し、実装が追いついていないようです。
利用するならば、ノーログポリシーのVPNと、プライバシー重視のブラウザを併用することをおすすめします。
コンセプトとしては面白いと思いますので、今後に期待したいところです。