NymVPNは、複数ノードを経由することで高い匿名性を持つVPNサービスです。この記事では、NymVPNの仕組みと、一般的なVPN、Torとの違い、実際に使ってみた感想をご紹介します。
NymVPNの仕組み
- NymVPNとは
- NymVPNの料金
- 普通のVPNとの違い
- Torとの違い
- NymVPNの安全性
- NymVPNの危険性
NymVPNとは
「NymVPN」は、スイスの「Nym Technologies」が提供するVPNサービスで、「mixnet」という分散ネットワークにより高い匿名性を実現していることが特徴です。
mixnetは、Torのように3つのノードを経由するだけでなく、偽トラフィックを混ぜることで、誰がどこに通信しているかを分からなくしています。
また、支払い情報と利用者を結びつけないことで、匿名性を保っています。
NymVPNの料金
NymVPNは有料サービスです。
料金は時期により異なりますが、概ね以下のようになっています。
- 1ヶ月:$14.99
- 1年:$53.88($4.49/月)
- 2年:$90.96($3.79/月)
無料プランは用意されていませんが、7日間のお試し期間が設定されています。
クレジットカード登録は必要となりますが、7日以内に解約すれば、支払いはありません。
解約を忘れると自動課金されるのでご注意ください。
1アカウントにつきデバイス10台、2TB/月まで使用できます。
普通のVPNとの違い
VPNサービスの匿名性は、その会社を信用できるかでしかありません。
VPNは通信を暗号化しますが、VPNの運営会社には全ての通信記録が残ります。
運営会社は、その通信記録を全て破棄するという「ノーログポリシー」によって、ユーザーのプライバシーを守っています。
しかし本当に破棄しているかどうかは、ユーザー側で確かめようがありません。
ほとんどの無料VPNサービスは、ユーザーデータを販売することで収入を得ています。
NymVPNは、分散ノードを多段経由することで、技術的な仕組みとして匿名性を確保しています。
Torとの違い
Torも、3つのノードを経由することで、匿名性を確保しています。
NymVPNとの違いは、Torは(基本的に)出口ノードを指定できないという点です。
VPNを利用する目的の一つは、接続国を変更し、地域制限を回避することですが、Torはこれができません。
NymVPNでは、入口ノードと出口ノードを指定できるので、一般的なVPNとTorの匿名性を組み合わせたような使い方できます。
NymVPNの安全性
NymVPNがどのように匿名性を守っているかについてご紹介します。
mixnet
mixnetは、複数のノードをランダムに通ることで、誰が誰に通信しているのかを隠す技術で、実はTorより古くから存在しています。
さらに、ダミートラフィックを流す、わざと遅延させる、複数のユーザーのデータを混ぜてシャッフルする、パケット長を一定にするなどの対策をしており、通信量や接続タイミングからの特定をできないようにしています。
NymVPNには、高速(WireGuard)と匿名(mixnet)の2つのモードがあり、それぞれ以下のように異なります。
- 高速:【接続元】-【入口ノード】-【出口ノード】-【接続先】
- 匿名:【接続元】-【入口ノード】-【mixnode】-【mixnode】-【mixnode】-【出口ノード】-【接続先】
一般的なVPNとTorも含めて、ホップ数順に並べると以下のようになります。
- 1:一般的なVPN
- 2:NymVPN(高速)、一般的なVPN(ダブルホップ)
- 3:Tor
- 5:NymVPN(匿名)
匿名支払い
NymVPNは、匿名クレデンシャル(verifiable anonymous credential)という手法で、支払いが完了したという権限のみを管理しています。
これにより、支払い情報からユーザーを特定できないようにしています。
ほとんどの商用VPNは、匿名で支払いをすることはできません。
Torは非営利プロジェクトなので、支払い自体がありません。
オープンソース
NymVPNのソースコードはGitHubで公開されており、誰でも確認できるようになっています。
第三者機関による監査
NymVPNは、定期的に第三者機関の監査を受けており、その結果を公表しています。
バグ懸賞金
NymVPNでは、脆弱性の報告に対して報奨金を支払うプログラムを設けています。
支払いは独自のNYMトークンによって支払われます。
NymVPNの危険性
NymVPNの注意点についてご紹介します。
利用者が少ない
NymVPNは、まだ利用者が少ないため、十分に安全性が検証されていない可能性があります。
ノード数が少ない
Torのノード数が約8,000なのに対し、Nymのノード数は数百程度とみられています。
データのシャッフル等で撹乱しているとはいえ、全ノードを掌握される可能性が高まります。
NymVPNであることは分かる
NymVPNで身元を隠すことはできるかもしれませんが、NymVPNであるということ自体はバレる可能性があります。
経営状態
Torと異なり、NymVPNは営利企業です。
サブスクリプションと独自トークンの発行により運営されていますが、まだ利用者数が少ないため、先行きは不透明です。
スイス
NymVPNは、スイスを拠点としています。
スイスは、以前はプライバシーを尊重する安全な国と見られていましたが、最近は検閲体制が強化されつつあります。
そのため、同じくスイスを拠点とするProton VPNは、スイスからの移転を表明しています。
NymVPNも状況次第ではどうなるのか分かりません。
NymVPNを使ってみる
- 無料アカウント登録
- インストール
- 接続
- 通信速度
- 解約
- まとめ NymVPNは使える?
無料アカウント登録
NymVPNでは、7日間の無料お試し期間を利用することができます。(昔はなかったので時期によるのかもしれません)
「https://nym.com/」にアクセスし、「Get NymVPN」をクリックします。
「Free Trial」をクリックします。
クレジットカード番号を登録します。
「Secure my passphrase」をクリックします。
パスフレーズが表示されるので、忘れずに保存します。
「Go to account」をクリックします。
インストール
アカウント登録が完了したら、アプリをインストールします。
ここではWindows用をご案内します。
iPhone、Androidはストアからインストールしてください。
公式サイトにアクセスし、「Download」から「Download for Windows」をクリックします。
ダウンロードしたファイルを実行し、「Next」をクリックします。
インストール先を確認し、「Next」をクリックします。
完了したら「Next」をクリックします。
「Finish」をクリックして完了です。
接続
アプリを起動すると、以下のような画面となります。
「匿名のエラーレポート」「匿名のネットワーク統計」はオフにすることをおすすめします。
モードで「高速」か「匿名」かを選択します。
高速は2つのノード、匿名は5つのノードを経由します。
ここではモードで「高速」、エントリーロケーションで「日本」、出口ロケーションで「スイス」を選択しました。
ここで、アクセスコードの入力を求められます。
これは、支払い完了した時に表示されたパスフレーズです。(余談ですがこういう用語が統一されていないのは凄く気になります)
設定項目もありますが、基本的には「接続」と「接続解除」をするだけです。
通信速度
「fast.com」で通信速度を確認してみました。
NymVPN接続前は94Mbpsでした。(なぜかとても遅かった)
上記のように「高速」モードで、「日本」「スイス」に接続したところ、44Mbpsとなりました。
「匿名」モードにしたところ、測定不可となりました。
別のサイトを開こうとしても、エラーになることが多いです。
Google検索やテキスト中心のサイトであれば開くことはできますが、YouTube等を視聴するのは難しいと思われます。
解約
解約をするには、管理画面の「Account」-「Manage subscription」から、支払いをキャンセルします。
無料お試し期間で終了する場合は、忘れずに7日以内にキャンセルする必要があります。
まとめ NymVPNは使える?
NymVPNが高い匿名性を持つことは間違いないと思いますが、5ノードホップすると、ほとんどのサイトが閲覧できなくなることを考えると、かなり用途が限られるのではないかと思います。
2ノードホップであれば通常使用もできますが、それはNordVPN等の一般的なVPNも備えている機能です。
Torが無料で使用でき、一般的な有料VPNの方が使い勝手は良いことを考えると、NymVPNの立場はなかなか微妙となります。
極めて高い匿名性が必要となる場合に、お試し期間で正常に使用できるか確認をした後、採用することをおすすめします。
また、まだ新しいサービスで、今後の見通しも不透明なため、長期契約にも注意が必要となります。
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