匿名性を重視したMullvad Browserでフィンガープリントを防げる?

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匿名性を重視したMullvad Browserでフィンガープリントを防げる?

2025年1月29日

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最近Googleが、広告のためにフィンガープリントを活用する方針を発表したことを受け、Firefox系のブラウザに注目が集まっています。その中でもMullvad Browserは、VPNで有名なMullvadとTor Projectが共同開発したブラウザということで、匿名性を最優先にするユーザーにとっては有力な候補となっています。この記事では、Mullvad Browserの概要と、本当にフィンガープリントによる特定を防ぐことができるのかについて解説します。

ポイント

  • なぜMullvad Browserが必要なのか
  • Mullvad Browserの基本的な使い方
  • フィンガープリントのテスト

Mullvad Browserとは

Mullvad Browserの概要と、Tor Browserとの違い、背景にあるセキュリティとプライバシー保護の問題について解説します。

Mullvad Browserのメイン画面

Mullvad Browserの概要

Mullvad Browser」とは、スウェーデンのVPN会社「Mullvad」と、「Tor Project」が共同開発した、プライバシー保護に特化したブラウザです。

Mullvadは、匿名性に優れたVPNサービスとして高い評価を得ています。

Tor Projectは、「Tor(The Onion Router)」という、複数のノードを中継することで匿名性を高める仕組みを開発しています。

Tor Browserじゃダメなの?

Tor Projectは、「Tor Browser」という匿名性に特化したブラウザも開発しています。

それではなぜ、Mullvad Browserも開発したのかと言うと、Tor Browserにはいくつかの欠点もあるからです。

とても遅い

Tor Browesrは、Torネットワークに接続することが前提となっています。

Torは、3つのノードを経由することで、送信元と送信先を紐づかなくすることを基本としています。

しかしその分、通信速度が劇的に遅くなります。

日常使いするには不向きと言えます。

ブロックされる

Tor Browserは、匿名性を高めますが、Torネットワークに接続していること自体を隠すことはできません。

Webサイトによっては、Torネットワークからのアクセスを全てブロックしていることがあります。

その他にも、高いセキュリティ設定と引き換えに、正常に閲覧できないことも多いので、やはり日常使いには向いていません。

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Mullvad Browserの特徴

Mullvad Browserの特徴をご紹介します。

TorネットワークではなくVPN接続を前提

Mullvad Browserは、Torではなく、VPNと併用することを前提としています。

Mullvad VPNである必要はなく、どのようなVPNでも利用できます。

VPNが必須という訳でもありませんが、コンセプトとしては、VPNと一緒に使うことが推奨されています。

フィンガープリントを削除

Mullvad VPNは、フィンガープリントを最小限に抑え、広告主やトラッカーによる追跡を防ぐことを目的としています。

この機能は、Tor Browserの基盤技術が採用されています。

フィンガープリントとは、ブラウザのバージョン、画面サイズ、言語、使用している拡張機能、設定などの情報を組み合わせると、ユーザーを特定できるというものです。

フィンガープリント自体は個人情報を持っていませんが、例えばGoogleなどの個人情報を持つ企業がフィンガープリントと紐づけると、容易に個人を追跡できることになります。

フィンガープリントは、クッキーと異なり設定で拒否することができないので、プライバシー保護の観点から問題視されています。

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Firefoxベース

Mullvad Browserは、Firefoxをベースに開発されているので、使用感はFirefoxとほぼ同じです。

特に使用に戸惑うということはないでしょう。

オープンソース

Mullvad Browserは、オープンソースとしてGitHub上で公開されているので、透明性が高く、誰でも信頼性を確認することができます。

iOS/Android版はない

Mullvad Browserは現在のところ、Windows、macOS、Linuxでのみ提供されています。

iOSやAndroidなどのスマホでは利用できません。

uBlock Originをプリインストール

強力な広告ブロッカーであるuBlock Originが、拡張機能としてあらかじめインストールされています。

このため、特に設定を変更する必要なく、そのままの状態で使用してもプライバシーが保護されます。

拡張機能のインストールは推奨されていない

Mullvad Browserには、他のFirefox拡張機能をインストールすることもできますが、推奨されていません。

拡張機能自体の安全性が確認できないということと、拡張機能をインストールすればするほどユニークとなり、フィンガープリントで特定されやすくなるためです。

Google Chromeとフィンガープリント

Googleは、2025年2月16日より、フィンガープリントを広告に活用することを発表しています。

フィンガープリントの特性上、設定で拒否することができず、ユーザーがコントロールすることも、削除することもできないため、プライバシー保護の観点から批判されています。

GoogleとChromeを分離させるという議論もありますが、最早Chromeは安全ではないので、使用してはいけないという声が高まっています。

Google Starts Tracking All Your Devices In 6 Weeks—Forget Chrome And Android (Forbes)

安全性と匿名性の違い

インターネット上の活動において、セキュリティとプライバシー保護は同列に語られることが多いのですが、正確には相反する考えです。

例えば昨今は物騒なので、フルフェイスのヘルメットと防弾チョッキを身に着けて電車に乗ったとします。

身の安全は守れるかもしれませんが、とても目立ちますし、何度も行けば容易に本人特定されます。

インターネット上でも同じで、セキュリティ対策を強化すればするほど、目立つことになります。

匿名性を高める基本は、なるべく周囲と同じようにして、目立たなくすることです。

VPNとフィンガープリントの違い

VPNは、ネットワークの安全性と匿名性を高める技術です。

安全性は、暗号化とトンネリングによって高められます。

匿名性は、本来のIPアドレスを別のIPアドレスに置き換えること、他のユーザーとIPアドレスを共有すること、通信履歴を破棄すること(ノーログポリシー)、プライバシー保護を重視する国を経由することで高められます。

一方フィンガープリントは、デバイスとブラウザ固有のものなので、VPNでどれだけ匿名性を高めても消すことができません。

Mullvad Browserのような、フィンガープリントを最小にするブラウザと、VPNを併用することが必要となります。

プライバシー保護に特化したブラウザとは

世の中にはたくさんのブラウザが発表されており、プライバシー保護を最優先にしたブラウザも多くあります。

どれが一番安全かというのは一概には言えませんが、有名どころに限定し、デフォルト設定のままで使用するということを考えると、だいたい以下のようになるのではないかと思います。

  1. Tor Browser
  2. Mullvad Browser
  3. Librewolf
  4. Firefox
  5. Chrome

上に行くほど匿名性は高くなりますが、使い勝手は悪くなります。

下の方がより汎用的に使用することができますが、匿名性は低くなります。

拡張機能や設定によっても変わってくるので、大まかなイメージとしてお考えください。

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Mullvad Browserの使い方

Mullvad Browserの基本的な使い方と、設定のポイントについて解説します。

匿名性のコンセプト画像

ダウンロード

ブラウザで「https://mullvad.net/」を開き、「MULLVADブラウザをダウンロード」をクリックします。

Mullvad Browser ダウンロード 1

「ダウンロード」をクリックします。

Mullvad Browser ダウンロード 2

インストール

ダウンロードしたインストールファイルを実行すると、インストールが開始されます。

「標準」を選択した場合、そのままインストールが完了します。

Mullvad Browser 標準インストール

「詳細」を選択すると、インストール先を変更することができます。

Mullvad Browser 詳細インストール

「スタンドアロンインストール」にチェックを入れ、「次へ」をクリックします。

Mullvad Browser スタンドアロンインストール

インストール先のフォルダを選択し、「インストール」をクリックします。

Mullvad Browser インストール先フォルダの変更

インストールが完了すると、ブラウザが起動します。

特に何も変更せずに、デフォルト設定のまま使用しても問題ありません。

Mullvad Browser 初回起動画面

拡張機能

Mullvad Browserには、あらかじめ3つの拡張機能がインストールされています。

Mullvad Browser 拡張機能

Mullvad Browser Extension

Mullvad Browser Extensionは、IPアドレスやVPNの接続情報を確認したり、WebRTCを無効にしたりする拡張機能です。

基本的にはMullvad VPNユーザー向けの機能ですが、Firefoxは標準でWebRTCを無効にできないので、インストールしておいた方がよいでしょう。

NoScript

NoScriptは、JavaScriptやFlashなどの実行をブロックし、セキュリティを強化する拡張機能です。

基本的には全てブロックし、信頼できるサイトのみを許可するホワイトリスト方式を採用しています。

uBlock Origin

uBlock Originは、オープンソースの広告ブロッカーです。

他の広告ブロッカーに比べて、軽量でメモリ使用量が少ないとされています。

またオープンソースのため透明性が高く、ユーザーデータを収集することもありません。

DNS over HTTPS

Mullvad Browserでは、標準でMullvadのDNSを使用することで、情報漏洩を防いでいます。

Mullvad Browser DNS over HTTPS の設定

試しに【SurfShark】のDNSリークテストを使用したところ、シンガポールのサーバーとなっていました。

Mullvad Browser DNSリークの確認

検索エンジン

Mullvad Browserの検索エンジンは、初期設定ではDuckDuckGoとなっています。

Mullvad Browser 検索エンジン

DuckDuckGoは、IPアドレスや検索履歴などの個人情報を保存しない検索エンジンです。

広告は、検索キーワードにのみ基づいて表示され、個人を追跡することはしません。

検索結果は、Bingや独自クローラーなど複数のソースを基にしています。

Mullvad Browseでフィンガープリントを確認してみる

Chrome、Firefox、Mullvad Browser、Tor Browserについて、フィンガープリント確認サイトで調査してみた結果をご紹介します。

本人特定のコンセプト画像

Am I Unique ?

Am I Unique ?」は、フランスのリール大学が研究目的で運営している、ブラウザのフィンガープリントを確認できるサイトです。

ユーザーのフィンガープリントを収集し、どれだけユニーク(特定されやすい)かを調べることができます。

今回は、Chrome、Firefox、Mullvad Browser、Tor Browserの4つで比較していました。

Chrome

日常使いしているChromeで試したところ、330万人の中で、ユニーク(設定が重複しない)なフィンガープリントとなりました。

つまりVPN等を使用してネットワークの暗号化をしたとしても、フィンガープリントを辿ることで個人を特定できる可能性があるということです。

この画像には含まれていませんが、それぞれの項目に対し、何%の人と同じかが表示されています。

他人と同じであればあるほど、匿名性が高いということになります。

日本語の時点で0.25%なので、かなり絞られていることが分かります。(日本のサイトで調査すれば、別の結果となるでしょうが)

AM I Unique? Chromeの結果

Firefox

Firefoxも同様に、ユニークなフィンガープリントとなりました。

AM I Unique? Firefoxの結果

Mullvad Browser

ではMullvad Browerはどうかというと⋯⋯

あ、あれ!?

こちらもユニークなフィンガープリントとなりました。

言語設定やタイムゾーンが標準となっていますが、その他の項目で特定されてしまったようです。

AM I Unique? Mullvad Browserの結果

Tor Browser

Tor Browserでも同様にユニークとなりました。

Tor BrowserとMullvad Browserは基盤技術が同じなので、当然かもしれません。

AM I Unique? Tor Browserの結果

Cover Your Track

これではあんまりなので、アメリカのプライバシー保護団体EFFが提供する、「Cover Your Tracks」を使って同様のテストをしてみます。

Chrome

Chromeでは同様に、ユニークなフィンガープリントとなりました。

またトラッカーは、部分的なブロックとなっています。

Cover Your Tracks Chromeの結果

Firefox

Firefoxでは、フィンガープリントはユニークとなりましたが、トラッカーはブロックされています。

Cover Your Tracks firefoxの結果

Mullvad Browser

Mullvad Browserでは、フィンガープリントがユニークではなくなり、トラッカーからも保護されています。

Cover Your Tracks Mullvad Browserの結果

Tor Browser

Tor Browserも同様に、フィンガープリントがユニークではなくなりました。

Cover Your Tracks Tor Browserの結果

Mullvad Browserとフィンガープリントのまとめ

表にまとめると、以下のようになります。

Am I Unique ?Cover Your Tracks
Chrome
Firefox
Mullvad Browser
Tor Browser

「Am I Unique?」「Cover Your Tracks」両方とも、調査に訪れたユーザーのデータを基にしているだけですが、傾向としては掴めるのではないかと思います。

Mullvad BrowserやTor Browserを使うことによって、フィンガープリントを最小にすることはできますが、より詳細なデータが収集されると、特定される可能性が高まります。

現状では、使用しないよりは、使用したほうがマシということになります。

根本的には、国際的な法規制が必要となるでしょう。

ポイント

  • Mullvad Browserは、Tor ProjectとMullvadが共同で開発した、プライバシー保護に特化したブラウザ
  • フィンガープリントを最小にする設計となっている
  • Tor Browserは、とても遅いので、日常使いには不向き
  • VPNとMullvad Browserを併用することを推奨
  • Mullvad Browserでフィンガープリントを最小にすることはできるが、完全な匿名性を実現することは難しい

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