GMaps WVは、プライバシーを保護し、匿名のままGoogleマップを使用できるアプリです。Googleの依存度を減らしたいと思った時に、実は最難関となるのがGoogleマップです。Googleマップがあまりにも優秀なため、他の地図アプリでは不便に感じることがあります。そのため、Googleマップを使いつつも、個人情報が収集されないようにする、というのが現実的な解決策となります。この記事では、GMaps WVの使い方と、注意点について解説します。
GMaps WVとは
GMaps WVの機能と特徴、ブラウザ版Googleマップとの違い、OpenStreetMapとの違いについて解説します。
GMaps WVの概要
「GMaps WV」とは、プライバシーを保護しながらGoogleマップを利用できる、Androidアプリです。
Web版Googleマップの、ラッパー(wrapper)として機能します。
オープンソースで開発されており、完全に無料で使用できます。
Android専用のため、残念ながらiOS版はありません。
DivestOSとの関係
GMaps WVは元々、DivestOSプロジェクトの一部として開発されました。
DivestOSは、サポートの切れた古いAndroidデバイスでも使用できることを目的としたカスタムOSですが、2024年12月18日に開発終了となりました。
それに伴いGMaps WVも公開中止となりましたが、現在は、woheller69氏が引き継いで(フォークして)開発を続けています。
GMaps WVの機能
GMaps WVは、以下のような機能を持っています。
- アプリ終了時に、プライバシーデータを削除
- トラッカーやサードパーティリソースへのアクセスをブロック
- 全ての通信をHTTPSに制限
- 位置情報の利用のオフ/オン
データがGoogleアカウントと紐づかず、収集されることもないので、プライバシーを保護することができます。
GMaps WVの注意点
一方で、以下のような注意点もあります。
ナビが使えない
WebViewの制限により、バックグラウンド通信をすることができません。
これにより、リアルタイムのナビとしては使用できず、都度アプリを操作して確認する必要があります。
IPアドレスがバレる可能性がある
これもWebViewの制限により、WebRTC(Web Real-Time Communication)がブロックされません。
WebRTCとは、ブラウザ上でカメラやマイク等を利用する技術で、主にビデオ会議システムで使われています。
WebRTCは、ユーザーのコンピューターを操作するために、IPアドレスを使用します。
通常VPNを使用すれば、本来のIPアドレスを隠すことができますが、多くの低品質なVPNではWebRTC経由でIPアドレスが漏洩してしまいます。
NordVPNのような高品質なVPNであれば、WebRTCのIPアドレス漏洩も防いでくれます。
厳密な匿名ではない
GMaps WVは、アプリ終了時にCookie等は削除しますが、HTML・JS・画像などのキャッシュは保持されます。
これにより、例えば別のユーザーがアプリを開いた時に、前回の位置情報が表示されるなどして、個人を追跡できる可能性が残ります。
定期的に手動でキャッシュ削除することが推奨されています。
また将来的には、自動でキャッシュを削除するオプションも検討しているとのことです。
ブラウザ版との違い
GMaps WVは、ウェブ版のGoogleマップのラッパーとして機能します。
それであれば、セキュリティ重視のブラウザでGoogleマップを開けばいいのではないかと思われるかもしれません。
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実際そうなのですが、ブラウザで使用するのに比べて、以下のような利点があります。
ブラウザ設定を考えなくていい
GMap WVでは、不要なスクリプトやトラッカーをできるだけブロックするように設計されています。
同じことはブラウザの設定でも可能ですが、あまり厳しくすると、ほとんどのサイトが正常に動作しなくなるため、多くのユーザーは緩いセキュリティ設定のまま使用しています。
ブラウザの設定を変更したり、別ブラウザを用意してもいいのですが、そのような手間が不要というのがGMaps WVの利点です。
Googleアカウントと紐づかない
多くのAndroidユーザーは、ブラウザでGoogleアカウントにログインしています。
その状態でGoogleマップを開くと、自動的にGoogleアカウントと紐づいてしまいます。
Googleマップだけを除外するということはできません。
これも別ブラウザを使用することで回避できますが、GMaps WVを使ったほうが簡単です。
OpenStreetMapとの違い
Googleマップの代わりとなる地図アプリとして、OpenStreetMapがあります。
世界中のボランティアによって地図情報を更新するというプロジェクトで、実はGoogleマップより古くから存在しています。
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プライバシー保護を重視するのであれば、OpenStreetMapの方がいいのですが、Googleマップに比べるとやはり精度や利便性で劣ります。
特に、公共交通機関と連携をしたルート検索機能が弱いです。
Googleマップを匿名で利用するというのは、現実的な妥協点だと思います。
ちなみに、登録者数1億人を超えるYouTuberであるPewDiePie氏が、Google系サービスからの脱却を目指したところ、Googleマップが一番難しかったと述べています。(YouTube以外で)
オープンソースの地図アプリ(おそらくOpenStreetMap)を使ったところ、30分遅刻してしまったそうです。(PewDiePie氏は日本在住です)
結局スマホアプリではなく、車載のGPSナビを使用することにしたとのことです。
(個人的には、それはそれで問題だと思います。車載システムのプライバシーは、スマホ以上に無法状態です)
GMaps WVの使い方
GMaps WVは、Googleマップを表示しているだけなので、特に解説が必要ということもありませんが、注意点のみ軽くご紹介します。
インストール
GMaps WVは、通常のGoogle Playストアでは公開されていません。
F-Droidアプリか、またはAPKファイルを直接ダウンロードする必要があります。
ここでは、APKファイルをダウンロードする方法でご案内します。
F-DroidのGMaps WVのページを開きます。
画面を下にスクロールして、最新バージョンの「APKをダウンロード」をタップします。
ダウンロードしたファイルを開くとインストールされます。
「この提供元のアプリをインストールできるようにしますか?」
と聞かれた場合は「許可」してください。
使い方
GMaps WVは、Googleマップの画面を表示しているだけなので、使い方は通常のGoogleマップと同じです。
ちなみにこちらは、ブラウザでGoogleマップを開いた画面です。
当然ですが、まったく同じであることが分かります。
ルート検索も問題なく使えます。
リアルタイムの交通情報も反映されています。
キャッシュの削除
GMaps WVの注意点の一つが、キャッシュが残るということでした。
キャッシュを削除するには、Androidの「設定」-「アプリ」-「GMaps WV」を開き、「ストレージとキャッシュ」をタップします。
「キャッシュを削除」をタップします。
まとめ GMaps WVとは
GMaps WVは、Googleマップをプライバシーを維持した状態で使用できるAndroid専用アプリです。
Googleアカウントと紐づかず、個人情報が収集されることを阻止します。
プライバシー保護性能の高いブラウザで、Web版のGoogleマップを開くことと同じですが、細かなセキュリティ設定を意識する必要がないという利点があります。
ただし、WebRTCからIPアドレスが漏洩する可能性があるため、より安全に使用するならば、高性能で信頼性の高いVPNと併用することをおすすめします。