VPN大全 デジタルプライバシー Weeklyレポート 2026年7月第4週

Weeklyレポート

VPN大全 デジタルプライバシー Weeklyレポート 2026年7月第4週

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2026年7月20日〜7月26日のデジタルプライバシー関連ニュースをまとめてお届けします。

ヘッドライン

年齢確認・SNS規制

フランス、15歳未満のSNS利用を全面禁止する法案を可決 EU加盟国で初

フランス議会の両院が7月21日、15歳未満の子どもによるSNS利用を全面的に禁止する法案を可決しました。SNSへの包括的な禁止令を成立させたのはEU加盟国では初めてです。法案には高校での携帯電話の使用禁止も盛り込まれています。

マクロン政権は9月の新学期からの施行を目指していますが、予定どおりに進む可能性は低いとみられています。まず、合憲性を判断する憲法評議会の審査が行われる見込みで、これが施行を遅らせる可能性があります。また、EUのデジタルサービス法(DSA)と内容が重複していると欧州委員会から指摘を受け、採決直前に修正協議が行われた経緯もあります。

左派政党「不服従のフランス」は、合憲性が不明確なこと、実質的にオンライン上の匿名性を終わらせること、施行が不可能なことを理由に反対しました。オンライン保護団体e-Enfanceも、15歳未満の既存アカウントをどう特定・停止するのか、新規アカウントの年齢確認をどう実施するのかという実務上の課題を指摘しています。

背景には、有害コンテンツと10代の自殺との関連を訴えてTikTokを提訴した家族の存在や、12〜17歳の約90%が毎日スマートフォンでインターネットを利用しているという保健当局の調査があります。

SNSの年齢規制は2024年のオーストラリア(16歳未満)を皮切りに、スペイン・デンマーク・ギリシャ・イギリスでも検討が進んでおり、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も子どものSNS利用制限を求めています。

イギリスの新首相バーナム氏、デジタルID計画の完全廃止を表明

7月20日に首相に就任したイギリスのアンディ・バーナム氏が、最初の主要政策として、全成人を対象とした政府発行デジタルIDの計画を完全に廃止すると表明しました。

イギリスのデジタルID計画は、スターマー前首相が不法就労対策と行政のデジタル化を掲げて打ち出したものです。しかし300万人近くが反対の議会請願に署名し、政府は今年1月に義務化を取り下げて任意方式に転換していました。予算責任局(OBR)は3年間で18億ポンドの費用がかかると試算しています(政府はこの数字を否定)。

注目したいのは廃止の理由です。バーナム氏の事務所はプライバシー侵害を理由にはしておらず、「国民IDスキームに費やす予定だった時間と資源を、生活費支援など今最も必要とされているところに振り向ける」というコストと優先度の問題として説明しています。

世界的にデジタルID導入の流れが続くなか、一度動き出した国家規模のID計画が撤回されるのは珍しい事例です。

監視・プライバシー

米国で初、「デュレスパスワード」によるスマホデータ消去が起訴される

アトランタ在住の米国人男性Samuel Tunick氏が、海外から帰国した際の空港検査で意図的にスマートフォンのデータを消去したとして、連邦法違反で起訴されました。スマートフォンに組み込まれた「デュレスパスワード(脅迫用パスワード)」によるデータ破壊が立件されるのは、米国で初めてとみられています。

Tunick氏の端末では、Google Pixel向けのカスタムAndroid OSであるGrapheneOSが動作していました。GrapheneOSには、通常のロック解除パスコードの代わりに専用のパスコードを入力すると端末のデータを消去する機能があります。

2025年1月、アトランタの空港で二次検査に連行された同氏がパスコードを伝え、係官がそれを入力すると「画面が真っ暗になり、数回点滅して再起動したように見えた」とのことです。検察は、当局による押収を妨げるための故意の財産破壊を禁じる連邦法(合衆国法典18編2232条)を適用しました。同氏は無罪を主張しています。

弁護側は、拘束と押収そのものが違法だとして証拠排除を申し立てています。当局は児童搾取画像の捜索を名目に端末へのアクセスを要求しましたが、その疑いを裏付ける証拠は示されず、実際にはアトランタの警察訓練施設建設への反対運動(いわゆる「Stop Cop City」)との関わりが捜査の目的だったと主張しています。

一方、税関・国境警備局(CBP)側は、入国を許可される前は米国の国境を越えていないため令状は不要という立場です。米政府は長年、入国前の端末検査には令状も裁判所命令も要らないと主張しており、この事件は国境で憲法上の権利がどこまで及ぶのかという問題をあらためて提起しています。

デジタルセキュリティ専門家のRuna Sandvik氏は「当局は『故意にデータを破壊した』と主張しうる。特定の国境を越えるときは、そもそもデータを持ち歩かない方がよい」と助言しています。裁判所は証拠排除の申し立てについて年内に判断を下す見込みです。

フランスとドイツ、米軍事ソフト「Palantir」の代替開発を検討すると表明

フランスとドイツが7月17日、メルツ独首相とマクロン仏大統領の会談後の共同宣言で、米国Palantir社が提供する軍事ソフトウェアの代替を欧州で開発することを「検討する」と表明しました。宣言では「データ主権を促進するため、欧州の主権的なデジタル基盤の開発を検討する」とし、フランスのAI軍事指揮統制プラットフォーム「Arcadia」を候補の一例として挙げています。

Palantir離れ自体は既に始まっています。フランスの国内情報機関は6月にPalantirとの契約打ち切りを発表し、ドイツの情報機関もPalantirではなくフランス企業ChapsVisionを選定しました。今回の宣言は、その流れを首脳レベルで追認したものです。

ただし実現性には疑問符が付きます。NATOの高官は、NATOでも使用されているPalantirのMavenソフトウェアに対する「真の欧州製代替は存在しない」と述べており、宣言の表現も「開発の検討」にとどまっています。仏独共同の軍事プロジェクトは、次世代戦闘機FCASをはじめ難航しているものが多く、監視・情報分析という中核インフラを米国企業に依存する状況からの脱却には時間がかかりそうです。

セキュリティ・テクノロジー

LG、スマートTVアプリから住宅用プロキシSDKを排除へ

LG Electronics USAが、テレビを常時稼働の住宅用プロキシ(レジデンシャルプロキシ)ノードに変えるアプリをスマートTVから排除する方針を明らかにしました。開発者と協力してwebOSプラットフォームのアプリからプロキシ機能を削除させ、応じないアプリは配信停止にするとしています。

きっかけは、セキュリティ企業Spurの調査です。LGのwebOSストアで配信されているゲームなどのアプリの42%超に、テレビを第三者の通信中継点に変えるプロキシSDKが組み込まれていることが判明しました。SamsungのTizen OS向けアプリでも4分の1超に同様の機能が見つかっています。

プロキシ業者はSDKを組み込んだ開発者に報酬を支払う仕組みで、アプリ開発者の収益源として広まっていました。パックマンのようなゲームでは「広告を見るか、テレビを中継点として提供するか」をユーザーに選ばせる画面が表示されます。SDKの大半を占めていたBright Dataは、すべて同意に基づく運用だと反論しています。

Spurが指摘するのは、住宅用プロキシの存在そのものではなく、大半の消費者がコンピュータだと思っておらず監査する手段も持たない機器に、それが大規模に組み込まれている点です。スマートTVは常時ネットワークに接続されたPCと変わりませんが、アプリの奥に埋もれた一度きりの同意画面では、家庭内の子どもが同意してしまうケースも防げません。

なおLGをめぐっては、一部のLCDモニターがMcAfeeの有料アンチウイルスを宣伝するアプリを承認なしにWindows Update経由でインストールさせるという別の問題も報じられています。

Google、セルフィー動画によるサインインを導入

Googleが、Googleアカウントの新しいサインイン方法として「セルフィー動画」を導入しました。事前にカメラの前で頭を動かしながら複数の角度から自分を撮影して登録しておき、パスワードを忘れたときや普段の端末が手元にないときに、もう一度セルフィーを撮影して照合することでアカウントに戻れるという、アカウント復旧向けの仕組みです。

Googleによると、動画は暗号化して保管され、ユーザーが追加の用途への共有を選択しない限りサインインの確認のみに使われ、いつでも削除できます。AI生成の写真や動画によるなりすましを防ぐ多層的な対策も組み込まれているとしています。ブラジルで先行テストされていた機能で、Workspaceアカウント・子ども用アカウント・高度な保護機能プログラムの登録アカウントでは利用できません。

生体情報である顔の動画をGoogleに預けることには賛否がありますが、SIMスワップ詐欺などで乗っ取られやすいSMSや電話番号による復旧手段に比べれば安全性は高いという評価もあります。復旧手段を増やしたい人にとっては選択肢の一つになりますが、登録は任意なので、リスクと利便性を比べたうえで判断するとよいでしょう。

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