VPN大全 デジタルプライバシー Weeklyレポート 2026年7月第3週

Weeklyレポート

VPN大全 デジタルプライバシー Weeklyレポート 2026年7月第3週

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2026年7月13日〜7月19日のデジタルプライバシー関連ニュースをまとめてお届けします。

ヘッドライン

VPN・インターネット規制

イギリス政府、VPNを規制しないことを明言

イギリス政府が、VPNを規制しない方針を正式に表明しました。

技術担当大臣のリズ・ケンダル氏が7月15日の議会向け書面声明で「VPNには正当なプライバシーおよびセキュリティ上の用途がある」として年齢制限や禁止を行わないと明言し、オンライン安全担当大臣のカニシュカ・ナラヤン氏もBBCの番組で「私たちはVPNを制限しないことを決めた」と述べました。

背景には、イギリスで進むSNS規制の強化があります。政府は16歳未満のSNS利用を全面禁止する方針に加え、16〜17歳についても深夜0時から朝6時までSNSをデフォルトで利用できなくする「門限(Curfew)」や、動画の自動再生・無限フィードのデフォルトオフ化を発表しており、最初の規制は2027年初頭に施行される予定です。

年齢確認はVPNで回避できるため、規制の実効性を確保するためにVPN自体が制限されるのではないかと懸念されてきましたが、今回その可能性が否定された形です。

方針転換の根拠となったのは、政府自身の調査データです。科学・イノベーション・技術省(DSIT)の報告書によると、11〜17歳の26%がVPNを利用しているものの、年齢確認の回避を目的とするのは7〜10%にとどまり、45%は単に偽の生年月日を入力しているだけでした。子どものVPN利用の主目的はプライバシー保護だったということです。

今後、回避対策の責任はプラットフォーム側に課され、OfcomとICO(情報コミッショナー事務局)が10月までに検知・防止策を報告します。

Google、DNSリゾルバやIPアドレスを対象としたサイトブロッキングに反対を表明

Googleが、著作権指令の見直しに関する欧州委員会の意見募集に対し、DNSリゾルバ・IPアドレス・VPNを対象としたサイトブロッキングに反対する意見書を提出しました。文書には「機密」と記されていましたが、他の提出文書とともに欧州委員会のサイトで公開されています。

Googleの主張は、この種のブロッキングは「コンテンツを削除するわけではなく、代替DNSに切り替えれば容易に回避できるため効果がない」うえ、「合法的なサービスを巻き込むため不均衡だ」というものです。

実例も挙げられており、イタリアの海賊版対策システム「Piracy Shield」はGoogle DriveのサブドメインやCloudflare顧客の4,200万以上のドメインをホストするIPアドレスを誤ってブロックし、フランスでは裁判所のDNSブロッキング命令を受けてCiscoがOpenDNSの提供自体を停止しました。OONIの調査では、スペインのラ・リーガによるブロッキング命令の結果、サッカーの試合中継の間に55万以上のドメインがブロックされ、アムネスティ・インターナショナルやユニセフのサイトまで巻き込まれています。

こうしたブロッキングの主目的はサッカーの違法配信対策で、今回のワールドカップに合わせてインドでもDNSブロッキングが行われています。

一方、法制度がない米国ではドメイン押収で対応してきましたが、6月30日の下院公聴会でサイトブロッキング法案の最終文言が配布中であることが明らかになり、立法の動きが本格化しています。

日本でも、ISPが法的要請ではなく自主的に漫画村をDNSブロックしようとした例があります。

ランサムウェアを支えた「First VPN」、米財務省が管理者らに制裁

米財務省が7月13日、ランサムウェア集団を幇助したとして、VPNサービス「First VPN Service(1VPNS)」と、その管理者であるウクライナ人のドミトロ・ラシェフスキー氏に制裁を科しました。あわせて、マルウェアを無害なファイルに見せかけて検知を回避する「クリプター」を販売していたベラルーシ人のイェゲニー・シラエフ氏も制裁対象に指定されています(シラエフ氏はFirst VPNとは無関係)。

First VPNは2014年から運営され、ロシア系のサイバー犯罪フォーラムで「ログを保持せず、法執行機関の捜査に協力しない」ことを売りに宣伝されてきたサービスです。

財務省によると、米国の自治体・病院・学校・企業への攻撃で数十億ドル規模の損失をもたらしたランサムウェア集団に、身元の隠蔽や検知回避のためのインフラを提供していました。

2026年5月にはユーロポールとFBIがサーバー33台を押収してサービスを閉鎖しており、今回の制裁はその続報にあたります。管理者はウクライナで事情聴取を受けたものの、逮捕には至っていないようです。

なおこの制裁の影響で、Telegramが使用するドメイン「t.me」が世界的にアクセス不能になりましたが、First VPNに関連するチャンネルやリンクが削除されたことを受け、24時間以内に解除されました。

監視・プライバシー

ロサンゼルス市警察、Flock Safetyのナンバープレート監視カメラの使用を停止

全米で3番目に大きい警察組織であるロサンゼルス市警察(LAPD)が7月11日、Flock Safety社の自動ナンバープレート読み取りカメラ(ALPR)の使用を停止しました。2023年7月に結んだ3年契約の満了に合わせた措置で、LAPDの最高情報責任者ディーン・ジアラマス氏は「データを誰が所有し、収集後にどう扱われるのかについて、非常に明確な条件を設けることが争点だ」と説明しています。

Flock社はロサンゼルス市内で138台のカメラを運用し、全米では約5,000の法執行機関と契約する最大手ですが、ICE(移民・関税執行局)を含む連邦当局へのデータ共有が批判を集めてきました。

カリフォルニア州法は連邦当局とのナンバープレートデータ共有を禁止していますが、Flock社の全米横断的なシステムが事実上の抜け道になっていたと指摘されています。背景には、移民取り締まりを巡るカリフォルニア州と連邦政権の対立という構図もあります。マウンテンビュー市では2月、連邦・州の法執行機関が市の方針に違反してデータにアクセスしていたことが発覚してカメラ30台を停止し、その後契約を解除しました。同様の契約見直しは各地に広がっています。

今回の停止に先立ち、LAPDの監察官は監査報告書で、実効性のあるデータセキュリティ・プライバシー・アクセス制御の要件が契約に盛り込まれるまで、新規のALPR設置と契約締結を一時停止するよう勧告していました。Flock社は「誤解によるものだ」として、協議を通じた提携再開に期待を示しています。

プライバシー・法律・政策

Appleの「メールを非公開」が宣伝通りに機能しないとして集団訴訟

Appleのメールエイリアス機能「メールを非公開(Hide My Email)」が宣伝通りに機能していないとして、Appleがカリフォルニア州で集団訴訟を起こされました。訴状は、機能しないことを知りながら提供を続けたことが、同州の不当広告法や消費者保護法に違反すると主張しています。

この機能には、エイリアスの背後にある実際のメールアドレスを特定できる脆弱性が指摘されています。セキュリティ研究者が2025年6月に発見してAppleに報告しましたが、1年以上経っても修正されなかったため、2026年7月に研究者が脆弱性の存在を公表しました。悪用の具体的な手順は予防措置として公開されておらず、実際に悪用された既知の事例もありません。それでも「実アドレスを隠す」という機能の根幹に関わる欠陥が1年以上放置されていたことになり、訴訟はこの対応の遅さを問題にしています。

EU、サードパーティAIにGeminiと同等のAndroidアクセスを認めるようGoogleに正式命令

欧州委員会が7月16日、デジタル市場法(DMA)に基づき、サードパーティのAIサービスに対してGeminiと同じAndroidデバイス機能へのアクセスを認めるよう、Googleに正式に命令しました。音声コマンドやボタンによる起動、アプリをまたいだタスクの実行、アプリやデバイスのセンサーからのコンテキスト取得、オンデバイスAIモデルへのアクセスなど11の機能が対象で、Googleは大半を2027年8月1日までに実装するよう義務付けられています。

対照的なのがAppleの対応です。Appleはサードパーティの音声アシスタントが安全に機能へアクセスできる「Trusted System Agent」という仕組みを提案しましたが、欧州委員会に受け入れられず、DMAの要求は「あらゆるAIシステムにユーザーのデバイスへのほぼ無制限のアクセスを与えるものだ」として応じることを拒否しました。その結果、iOS 27のSiri AIはEUでは提供されません。

一方Googleは、先にGemini連携をAndroidに投入してから事後的に対応する道を選び、今回の命令を受けることになりました。Google自身も「数百万人の欧州市民にとって重要なプライバシーとセキュリティの保護策を損なうおそれがある」と反発しています。

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