中国やトルコなど、インターネット規制が厳しい国で検閲を回避するシステムとして、Psiphonがあります。この記事ではPsiphonの概要と使い方、実際に使ってみた感想を、わかりやすくご紹介します。
Psiphon Proの概要
Psiphonの仕組みと料金について解説します。
Psiphonとは
「Psiphon(サイフォン)」とは、検閲回避を目的とした、VPN、SSH、HTTPプロキシを組み合わせたシステムです。
Psiphonは、トロント大学のCitizen Labで開発が始まり、2007年に「Psiphon, Inc.」に運営が移されました。
Citizen Labは、国家による検閲を回避し、言論の自由や人権を守るために活動をしている研究組織で、過去に中国、イスラエル、サウジアラビアなどの検閲システムを暴いてきたことで知られています。時計メーカーとは関係がありません。
Psiphonは基本無料で利用でき、寄付、助成金、広告、有料オプションなどによって運営されています。
現在、バージョン3までリリースされています。
Psiphon Proとは
「Psiphon Pro」とは、Android向けの有料バージョンです。
どこにも説明がないので推測となるのですが、おそらく以下のような意味です。
- Psiphon:無料のみ
- Psiphon Pro:無料と有料オプション(高速化と広告なし)
Googleストアの国によって、どちらを提供するか変えているようです。日本では「Psiphon Pro」のみが利用できます。(無料でも使えます)
iOSの方は「Psiphon」のみで、こちらに有料オプションも含まれています。GoogleとAppleの仕様の違いなのか、技術的な違いなのか、よく分かりません。
Windows、iOS、Android版を実際に使ってみましたが、まったく別に開発されているようで、UIも全然違います。Android版にしかない機能もあるので、そういう意味で「Pro」なのかもしれません。
Psiphonの料金
Psiphonは基本無料で利用できますが、有料の高速化オプションがあります。
App Store経由のサブスクリプションか、独自のPsiCashの2つがあります。
iOS
- 1週間:350円
- 1ヶ月:1,150円
- 1年:7,700円
PsiCash(iOSも利用可能)
PsiCash | Windows | iOS | Android |
---|---|---|---|
1,000 | 1 CAD | 100円 | 100円 |
4,000 | ー | 400円 | ー |
5,000 | 5 CAD | ー | 420円 |
10,000 | 10 CAD | 1,000円 | 840円 |
30,000 | 30 CAD | 3,000円 | 2,500円 |
100,000 | 100 CAD | 10,000円 | 8,400円 |
- 1時間:100 PsiCash
- 1日:400 PsiCash
- 1週間:1,400 PsiCash
- 1ヶ月:3,000 PsiCash
1CAD=110円くらいです。
App Storeのサブスクリプションを利用するメリットはないので、PsiCashを買ったほうがお得になります。
しかし料金設定、雑すぎませんか……
こういうところが、大学発プロジェクトを感じます。
Psiphonの仕組み
Psiphonがどのように検閲を回避しているのかご紹介します。
複数のプロトコルを使用する
Psiphonでは複数の通信プロトコルを用意しており、1つがブロックされても別のプロトコルに自動的に切り替え、接続を試みます。
サーバーを変更する
Psiphonは多数のサーバーを保有しており、常時追加されています。ブロックされても、接続できるサーバーを自動的に探します。
トラフィックを偽装する
「DPI(Deep Packet Inspection)」による検出を避けるために、VPNパケットを他のプロトコルのパケットに見えるように偽装します。
Psiphon Proの使い方
Psiphonのインストール方法を、Windows、iOS、Androidに分けてご紹介します。
Windows
公式サイトから「Psiphon for Windows」をダウンロードします。
ダウンロードしたファイルを実行すると、いきなり接続された状態で起動します。インストールはありません。(最初びっくりしました)
接続サーバーは、初期設定では「Best Performance」になっています。「Select server region」から変更できます。
選べる国は以下の通りです。
- オーストリア
- ベルギー
- ブルガリア
- カナダ
- スイス
- チェコ
- ドイツ
- デンマーク
- エストニア
- スペイン
- フィンランド
- フランス
- イギリス
- ギリシャ
- クロアチア
- アイルランド
- 日本
- オランダ
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- ルーマニア
- セルビア
- スゥエーデン
- アメリカ
ちなみにBest Performanceは、日本ではなくアメリカのサーバーに接続されていました。
「LANGUAGE」から言語を変更できますが、日本語はありません。
接続したり、設定を変更したりするたびに、ブラウザでページが開きます。どうやら、これが「広告」のようです。
開くのはIPアドレス確認サイトなどで、広告っぽくないのですが、広告枠が売れていないのではないかと逆に心配になります。(広告ではなく機能なのかもしれません)
iOS
App Storeから「Psiphon」をダウンロードします。
「Select Language」を選んでも日本語はありません。「Next」をタップします。
プライバシーポリシーが表示されるので、「Accept」をタップします。
「Next」をタップします。
VPN構成の追加を求められるので「許可」をタップします。
「Next」をタップします。
通知を許可するか聞かれます。どちらでもいいと思います。
課金するかどうか聞かれます。無料プランで使うには「Dismiss」をタップします。
Android
Play Storeから「Psiphon Pro」をダウンロードします。
利用規約を読み「I ACCEPT」をタップします。
マルウェアブロックを利用するか聞かれます。基本的には「YES」でいいと思います。
接続リクエストを求められるので、「OK」をタップします。
接続するには、画面下部の「Start」をタップします。
Psiphon MalAwareとは
「Psiphon MalAware」とは、「Malware(悪意のあるソフトウェア)」を検出すると、自動ブロックしてくれる機能です。
WindowsやiOSにはなく、Androidだけの機能のようです。
一つ申し上げさせていただくと、「Malware」と掛けて「MalAware」としているわけですが、誤字としか思えません。私も、画像編集していて初めて気が付きました。Google先生にも「もしかして: Malware」と言われる始末です。もっと分かりやすい名前にした方がよいのではないかと思います。
Psiphon Proが残念な理由
Psiphonの通信速度、検閲回避性能、匿名性についてご紹介します。
Psiphonの速度
Psiphoneに接続する前と、接続後の通信速度をfast.comで比較しました。
接続前は390Mbpsでした。
接続後は680Kbpsとなりました。「Mbps」ではありません。「Kbps」です。
これは……
無料とはいえ、使い物にならないですね。
これではあまりにもアレなので、サブスクを購入してみました。(3日以内であればキャンセルできる)
すると、ぴったり100Mbpsとなりました。
うーん……
有料でもこの速度となると、ちょっと厳しいですね。
Psiphonは中国から接続できる?
しかし、Psiphonに求められているのは通信速度ではありません。検閲回避です。特に、中国国内から、グレートファイアウォールを超えて接続できるかが問題となります。
ネット上のレビューを調べると、確かに数年前は問題なく接続できていたようですが、直近では接続できなかったという情報があります。
これでは、Psiphonの存在意義が……
お互いにアップデートを繰り返しているので、今後どうなるのかというところではありますが、残念なお知らせではあります。
なお、中国国内から接続しやすいVPNサービスとしては、日本のMillenVPNが知られています。
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Psiphonの匿名性は?
Psiphonは検閲回避することを目的としていますが、完全な匿名性を提供しているわけではありません。
ログに関しては、プライバシーポリシーに記載されていますが、完全なノーログポリシーではありません。
通信のパフォーマンスや、ちゃんと検閲回避できているかを測定するために通信データを分析しています。また、広告を提供するために、いくつかのデータが使用されています。
匿名性を重視するならば、多様なプライバシー保護機能を持つ、NordVPNをおすすめします。