一般的に無料VPNはセキュリティの観点から推奨されていませんが、セキュリティサービスを提供している会社の無料VPNであればどうでしょうか。WARPは大手ネットワーク会社のCloudflareが提供するVPNサービスで、セキュアDNSもセットになったものです。この記事では、WARPの特徴と、向いている作業、向いていない作業、安全性について、わかりやすく解説しています。
Cloudflare WARPの安全性と使い方
WARPの仕組み、評判、接続方法、速度について解説します。
Cloudflareとは
「Cloudflare(クラウドフレア)」とは、インターネット上で様々なサービスを提供している、アメリカの会社です。
Cloudflareが提供している代表的な機能としては、以下のようなものがあります。
- Content Delivery Network(CTD)
- DDoS Protection
- Load Balancing
- Web Application Firewall(WAF)
- Domain Name System(DNS)
- SSL/TLS Certificate
- Identity and Access Management(IAM)
- Virtual Private Network(VPN)
WARPとは
「WARP」とはCloudflareが提供する無料のVPNサービスです。
無料のDNSサービスである「1.1.1.1」の追加機能という位置づけです。
通常のVPNサービスは、VPNによってセキュリティとプライバシー保護が強化されるものの、DNSから情報漏えいすることが問題となります。そのため、別途DNSサービスを用意していることが多いです。
WARPは、DNSの方がメインにあるというところが異なります。
WARP+とは
「WARP+ UNLIMITED」はWARPの有料オプションで、より高速な通信が利用できます。
少し分かりにくいのですが、おそらく以下のような意味だと思います。
- WARP+:友達紹介で高速通信を無料で1GB追加
- WARP+ UNLIMITED:550円/月で高速通信を容量無制限に利用可能
ただ個人的には、無料プランでも十分に安定しているので、有料プランを購入する必要性を感じませんでした。営業妨害ではなく、CloudflareはWARPで積極的に儲けようとはしていないように思えます。
1.1.1.1とWARPの違い
「1.1.1.1」とは、Cloudflareが提供する、無料の公開DNSリゾルバーです。
「DNS over HTTPS(DoH)」や「DNS over TLS(DoT)」などのセキュリティが強化されたDNSプロトコルをサポートしている他、ノーログポリシーによってユーザーの履歴を保存したり、他社にデータ販売することはないとしています。
「1.1.1.1」は、デバイスのDNS設定で「1.1.1.1」「1.0.0.1」を登録するだけで、誰でも使えます。
「WARP」は、正確には「1.1.1.1 with WARP」というサービス名で、DNSとVPNがセットになったものです。
アプリをインストールすることで使えるようになり、iOS、Android、Windows、macOS、Linuxに対応しています。
- App Store(iPhone、iPad)
- Play Store(Android)
- 公式サイト(Windows、macOS、Linux)
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WARPの評判
WARPに対する一般的な意見をご紹介します。
利点
使いやすい
以下でも紹介していますが、WARPのアプリはインストールも簡単で、とても使いやすいです。
安定している
Cloudflareは世界中のデータセンターにサーバーを持っているため、どこにいても安定して接続することができます。
高いセキュリティ
Cloudflareは多くのセキュリティサービスを提供しているため、当然VPNのセキュリティも高いと考えられます。
無料
そしてこれらが全て無料で利用できるというのは、普通では考えられないことです。
欠点
サーバーを選択できない
WARPは、接続するサーバーを選択することはできず、自動で最寄りのサーバーに接続されるため、地域制限の回避には利用できません。
ストリーミング再生が安定しない
VPNである以上、速度が低下することは避けられませんが、ゲームや動画のストリーミング再生が安定せず、正常に利用できないという声があります。
会社としての対応
WARPではなくCloudflareの問題ですが、Cloudflareのサービスは犯罪者にも多く利用されており、それらの取り締まりが甘い、被害者に誠実に対応しないという指摘があります。
Cloudflareが広く利用されているだけ、その影響度も大きいです。
Hackers Abuse Cloudflare WARP To Hijack Cloud Services
WARPの仕組み
WARPは、WireGuardをベースに独自に開発した「BoringTun」プロトコルを利用しています。
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また上記のようにセキュアなDNS機能を備えており、ユーザーのDNSクエリを保護しています。
WARPが他のVPNサービスと決定的に異なるのは、Cloudflareが世界的なネットワークインフラを保持しているということです。そのため、自社の設備内だけで通信が完了することも多く、遅延を最小限に抑えることができます。
例えば、以下のような有名サービスがCloudflareを利用しています。
- Discord
- Shopify
- Crunchyroll
- Zendesk
- Medium
- Udemy
- Squarespace
WARPの使い方・接続方法
WARPの使い方はとても簡単で、解説するほどのこともないのですが、一応画像を使ってご説明します。
iOS、Android、Windowsで試しましたが、ほぼ同じです。以下はAndroidのものです。
アプリを起動すると、最初にWARPの(よくわからない)説明が表示されます。「次へ」をタップします。
プライバシーポリシーについての説明があります。「同意する」をタップします。
「VPNプロファイルをインストールする」をタップします。
接続リクエストが表示されるので「OK」をタップします。
これでインストールは完了です。あとは、中央のスイッチをONにするだけです。
WARPの通信速度
fast.comを使った通信テストの結果をご紹介します。
WARP接続前は440Mbpsでした。
WARP接続後は130Mbpsまで下がりました。
ただし体感としてはほとんど変わりません。
評判のところでは、ストリーミング再生で問題になるということでしたが、YouTubeを見るくらいであれば気になりませんでした。
スマホでゲームをすると、ちょっともたつく感じがありますが、このくらいであれば常時ONにしていても、全然問題ないなという印象です。
無料でこれは凄いです。
Cloudflare WARPは安全性に問題がある?
WARPに向いていること、向いていないこと、おすすめのVPNサービスについて解説します。
WARPはプライバシーを保護する?
WARPに限らず、VPNの匿名性というのは、運営会社のノーログポリシーにかかっています。
VPNを使用することで、ISPやネットワーク管理者からは、どのサイトを閲覧したなどの情報を隠すことができます。
ただし、VPNサーバーにはその情報が残ります。多くの商用VPNサービスは、それらの履歴を破棄するノーログポリシーを採用しています。
だから安心……と言えるでしょうか。
結局、利用者からすると本当にノーログなのかは確認のしようがないので、その会社を信じるかどうかでしかありません。
Cloudflareは大企業であり、インターネット業界からも高い信頼を得ているので、まぁ大丈夫じゃないのというところです。
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WARPに足りない機能
多くの商用VPNサービスが持っているが、WARPにはない機能をご紹介します。
サーバー選択
ほとんどのVPNサービスは、接続するサーバーを、国や都市別に手動で選択できるようになっています。
これにより、サービスやコンテンツの地理的制限を回避することができます。
WARPは、最寄りのサーバーに自動接続されます。日本からであれば、間違いなく日本のサーバーに接続されるので、地理的制限の回避には利用できません。
キルスイッチ
WARPにはキルスイッチ機能がないため、何かのタイミングでVPN接続が切れた瞬間に、本来のIPアドレスが漏えいする可能性があります。
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固定IPアドレス
WARPに接続すると、実際のIPアドレスがWARPのIPアドレスに置き換わりますが、これは他のユーザーと共有のものです。
自分専用のIPアドレスや、静的IPアドレスを取得することはできません。
難読化
商用VPNサービスでは、IPアドレスをシャッフルしたり、サーバーを多段に経由したりすることで、VPNであることを分かりにくくする、難読化という機能を提供していることがあります。
これにより、相手のサーバーからブロックされることを回避しています。
Cloudflareは、自社で利用しているIPアドレスを公開しているどころか、APIで取得できるようにしているため、サーバー管理者は容易にブロックすることができます。
WARPの使い道
上記を踏まえて、WARPに向いている作業、向いていない作業をご紹介します。
向いている目的
- 公衆Wi-Fiに接続する時のセキュリティ強化
- ISPやネットワーク管理者による検閲の回避
WARPは無料で利用できるので、気軽に活用するとよいでしょう。
向いていない目的
- 高い匿名性が求められる作業
- 地域制限の回避
- 高速ストリーミング通信が必要な作業
これらが必要な場合は、Torを組み合わせたり、下記でご紹介するような有料VPNサービスを利用するとよいでしょう。
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おすすめの有料VPNサービス
WARPには向いていない作業に対しておすすめなのが、NordVPNです。
NordVPNは業界最速と言われており、ゲームや動画のストリーミング再生も快適に利用できます。
また、ユーザーのプライバシーを保護するために、あらゆる方法を準備しています。
- ノーログポリシー
- 第三者機関による監査
- 本拠地をパナマに設置することで、政府による圧力を回避
- 二重VPN
- プライベートDNS
- キルスイッチ
- Tor連携