OpenStreetMapは、誰でも自由に使用できる地図データベースです。Googleに位置情報を渡したくない、地図データを活用したアプリ・サービスを開発したいという時に利用できます。この記事では、OpenStreetMapの概要と使い道、代表的なアプリについてご紹介します。
OpenStreetMapの概要と使い方
OpenStreetMapのライセンスと料金、活用事例、Google Mapsとの違いについて解説します。
OpenStreetMapとは
「OpenStreetMap」(オープンストリートマップ、OSM)とは、誰でも自由に利用・編集することができる、地図プロジェクトです。
言わば「地図のWikipedia」であり、世界中のボランティアが、地形・道路・建物・施設といった情報を編集しています。
OpenStreetMapは、2004年にイギリスのスティーブ・コースト(Steve Coast)氏により開始されました。
Google Mapsが2005年からなので、それより古いことになります。
OpenStreetMapのライセンス
OpenStreetMapは、「ODbL(Open Database License)」というライセンスにより提供されています。
以下のような特徴があります。
クレジット表記
OpenStreetMapのデータをWebサイトで表示したり、印刷したりする際は、クレジット表記が必須となります。
「© OpenStreetMap contributors」と書かれることが一般的です。
共有
OpenStreetMapのデータを加工して公開する際は、同じODbLライセンスで配布する必要があります。
商用利用
商用利用も可能ですが、上記のようにクレジット表記と共有を守る必要があります。
個人利用
外部公開しないのであれば、クレジット表記や共有の義務は発生しません。
OpenStreetMapの料金
OpenStreetMapは、完全に無料で利用できます。
ただしAPIアクセスには制限がかかる場合があります。
またOpenStreetMap自体は無料でも、それを利用したアプリは有料であったり、広告が表示されたりすることがあります。
OpenStreetMapでできること
OpenStreetMapの活用事例は「閲覧」「編集」「開発」の3つに分けることができます。
閲覧
一般ユーザーとして、地図を見たり、印刷したりすることができます。
利用するアプリによって、住所や施設の検索、経路検索、ナビゲーション、トラッキングといったことが可能です。
編集
通常の地図アプリとの最大の違いは、自らが地図の編集者になることができるという点です。
道路や建物を追加したり、施設の情報を更新したりすることができます。
日本では、アクティブユーザーとして数千人が活動しているようです。
開発
OpenStreetMapのデータを活用して、アプリやサービスを開発することができます。
一番有名な例は「ポケモン GO」でしょう。
最近では、大阪・関西万博マップ作りにも使われています。
「万博マニアックマップ」をバージョンアップして使い勝手を良くしました!
— K.Sakanoshita (@K_Sakanoshita) May 10, 2025
メニューの整理、ゾーン表示、アイコンサイズの自動調整など、気持ちよく使えるかと思います。
訪問管理や関係者道路の非表示も売りなので、ぜひお使いください!https://t.co/FIRElLytWF#大阪関西万博2025 #osmjp pic.twitter.com/ij4ALSWoCY
その他、多くの地図情報を使用するサービスの裏側でOpenStreetMapが動いています。
OpenStreetMapとGoogle Mapsの比較
OpenStreetMapとGoogle Mapsを比較すると、以下のようになります。
項目 | OpenStreetMap | Google Maps |
---|---|---|
精度 | 場所による | 高精度 |
閲覧料金 | 無料 | 無料 |
API料金 | サーバーによる セルフホストも可能 | 従量課金 |
編集 | 誰でも可能 | 基本的に不可 |
商用利用 | ODbLに従う | Googleの利用規約に従う |
プライバシー | ユーザー追跡、広告なし (アプリによる) | Googleアカウントと連携し、位置情報を収集 |
基本的にGoogle Mapsの方が、あらゆる面で便利だと思います。
精度や表示速度、リアルタイム性が段違いです。
ここでは、OpenStreetMapを使ったほうがよいケースをご紹介します。
プライバシーの保護
利用するアプリにもよりますが、OpenStreetMapは、個人情報を追跡せず、広告も表示されません。
位置情報を収集される心配がないので、プライバシーを守ることができます。
アプリ・サービス開発
地図情報を利用したアプリやサービスを開発する場合、Google Mapsのデータを利用するにはお金がかかります。
OpenStreetMapであれば、方法にもよりますが、無料で利用できます。
教育機関や自治体での利用
教育機関や自治体で地図を利用する際に、Googleという一企業のデータでは問題となる場合があります。
OpenStreetMapであれば、より柔軟な活用ができます。
アプリ別OpenStreetMapの使い方
OpenStreetMapのデータを使用した代表的なアプリと、使ってみた感想についてご紹介します。
ブラウザ
OpenStreetMapの地図を閲覧する一番簡単な方法は、ブラウザで「https://www.openstreetmap.org/」にアクセスすることです。
スマホからでも問題なく閲覧できます。
地図の編集をするには、アカウント登録が必要となります。
アカウント登録はメールアドレスの他、OpenID、Google、Facebook、Microsoft、GitHub、Wikipediaが利用できます。
しかし、私がメールアドレスで登録しようとしたところ、「残念ながら、現在、自動ではアカウントを作成できません。」というエラーとなりました。
Googleアカウントであれば、正常に登録できました。
OsmAnd
OsmAndは、OpenStreetMapのデータを使用した、定番の地図アプリです。
オフライン表示、経路検索、ナビ、登山や自転車向け表示など、多くの機能を備えています。
ただし、私が試した限りでは、動作が遅く感じました。
Organic Maps
Organic Mapsは、プライバシー保護を重視した地図アプリです。
オープンソースで開発されており、個人情報を収集したり、広告を配信したりすることがありません。
ただし機能は少ないので、個人的には、ブラウザで使うのとあまり変わらないという感想です。
オフライン利用を想定するならいいかもしれません。
MAPS.ME
MAPS.MEも、オフラインで利用できる地図アプリです。
一通りの機能は揃っており、OsmAndより軽快に動作しました。
なかなかいいのではないかと思います。
ただし、一部有料です。
Locus Map
Locus Mapは、登山などのアウトドアに特化した地図アプリです。
基本機能は無料でも使えますが、用途を考えると、課金は必須ではないかと思われます。
iOS版は開発中で、まだ機能が充実していないようです。
JOSM
「JOSM」は「Java OpenStreetMap Editor」の略で、Windows・macOS・Linuxで動作するOpenStreetMapの地図エディタです。
OpenStreetMapの簡単な編集であればブラウザからでもできますが、JOSMはより複雑で精密な編集ができるようになっています。
上級者向けのツールです。
Vespucci
Vespucciも高度な地図編集ができる、JOSMのスマホ版のようなアプリです。
Android専用で、iOS版は公開されていません。
StreetComplete
StreetCompleteは、もっと気軽に地図編集に参加したいという方向けのアプリです。
現在地周辺で不足している情報を、アプリの方から質問してくるので、それに答えていくだけで、ゲーム感覚で地図作りに貢献することができます。
Android専用で、iOS版は公開されていません。
まとめ OpenStreetMapの使い方とは
OpenStreetMapは、地図のWikipediaのようなプロジェクトで、誰でも自由に地図を編集したり、そのデータを活用したりすることができます。
Google Maps等の地図サービスは、個人情報が収集され、広告が表示されたりしますが、OpenStreetMapではそのような心配はありません。(利用するアプリによります)
また誰もが編集できるため、災害時や、万博のようなイベント時に、現地からの迅速に地図情報を更新することもできます。
ただし、経路選択やナビの性能は、Google Mapsにかなり劣ります。
必要に応じて使い分けるとよいでしょう。
個人的には「公式サイト」「MAPS.ME」「StreetComplete」をおすすめします。