iPhoneやiPadのVPN設定画面にオンデマンド接続という項目がありますが、これはいったい何なのでしょうか。この記事では、オンデマンド接続とは何か、オフにするとどうなるのかについて解説しています。また、オンデマンド接続とよく似た機能や、Androidについてもご紹介しています。
VPNのオンデマンド接続と類似用語
VPNのオンデマンド接続と、よく似た機能、VPN以外のオンデマンド接続について解説します。
オンデマンド接続とは
「オンデマンド接続(connect on demand)」とは、「要求された時に接続」という意味です。VPNで言えば、特定の条件が発生したときに、ユーザーが操作することなく、自動的にVPN接続されることを意味します。
特に、iPhoneやiPadに備わっている、インターネット接続時にVPNにも自動接続する機能のことを指すことが多いです。
キルスイッチやスプリットトンネリングとの違いは
VPNの接続については、目的に応じて様々な手法があり、用語も統一されていません。
同じ言葉なのにアプリやシステムによって動作が異なったり、違う言葉でも同じ動作だったりします。
最終的には、アプリやシステムごとに確認する必要がありますが、ここでは一般的な解釈をご紹介します。
オンデマンド接続
デバイスがインターネット接続された時に、自動的にVPN接続する機能です。
iOS、iPadOS、macOSでよく使われる言葉で、VPN構成プロファイルで定義されます。
iOSのオンデマンド接続は、「設定 - VPN」から、「i」アイコンをタップすると確認できます。
自動接続
デバイスの起動時に、自動的にVPN接続する機能です。
Windowsでよく使われる言葉です。
バックグラウンド接続
VPNアプリを終了しても、VPN接続を維持する機能です。
Windowsでよく使われる言葉です。
常時接続
デバイスの起動時に自動的にVPN接続し、切断された場合でも再接続を試みる機能です。
Androidでよく使われる言葉です。
VPN以外の接続のブロック
VPN接続されていない場合は、インターネット接続をブロックする機能です。
Androidでよく使われる言葉です。
AndroidのVPN設定は、「設定 - ネットワークとインターネット - VPN」から確認できます。
キルスイッチ
VPN接続が突然切断された時に、インターネット接続も切断する機能です。
アプリによって挙動がかなり異なるので、注意が必要です。
例えば、正常な操作でVPN切断した場合でも発動する・しない、インターネット再接続にブロックする・しない、などいろいろです。
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スプリットトンネリング
使用するアプリや接続サイトによって、VPNを経由する・しないを振り分ける機能です。
オンデマンド接続の機能が組み合わさっていることもあります。
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VPN以外のオンデマンド接続
オンデマンド接続は一般的な用語なので、VPN以外にも使われています。
ここではその中で、よく使われるものをご紹介します。
Wi-Fi
アクセスポイントに近づいた時に、自動的に接続します。
Wi-Fiの強度によって切り替えることもあります。
Bluetooth
デバイスが近くにある時に、自動的に接続します。
モバイルデータ
Wi-Fi接続が不安定な時に、自動的にモバイルデータ通信に切り替えます。
クラウドストレージ
ファイルはクラウド上に保存され、ファイルにアクセスがあった時にのみダウンロードされます。
様々なアプリ
スマートフォンのアプリは、バッテリー消費やデータ通信量を抑えるために、必要なときのみインターネット接続する機能を持っていることがあります。
NTTデータの@OnDemand接続サービスとは
上記とはまったく関係がなく、NTTデータ中国が提供する、医療機関向けのVPNサービスのことを指している可能性もあります。
「@OnDemand接続サービス」(支払基金接続・国保中央会接続)は、既存のインターネット回線に「OD-VPNアダプタ」というVPN装置を設置するだけで、オンライン請求やオンライン資格確認サービスが利用できるというものです。
オンデマンド接続のメリット・デメリット
オンデマンド接続のメリットとデメリット、分かりにくい点、オフにしていいかどうかについて解説します。
メリット
オンデマンド接続のメリットをご紹介します。
利便性の向上
VPNアプリを操作して手動でVPN接続する手間がなくなるので、より快適に使用できるようになります。
セキュリティの向上
自動的にVPN接続されるので、操作し忘れるということもなく、プライバシーが保護されます。
特にスリープから復帰した瞬間は、オンデマンド接続がないと、本来のIPアドレスが漏れてしまう可能性があります。
デメリット
オンデマンド接続のデメリットをご紹介します。
勝手にVPN接続される
オンデマンド接続は、VPNアプリではなくOSレベルで設定する(ことが多い)ので、知らない内にVPN接続され、どこでオフにすればいいのかも分からないという状況になりがちです。
特に、ノートンやウイルスバスターなど、総合セキュリティソフトを導入している時に、意図せずしてVPN接続されてしまう原因となります。
VPNが何かも分からず、通信速度が遅くなったり、ブロックされたりして困っているというケースはよくあります。
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動作が複雑
上記でご紹介したように、VPNの自動接続には、オンデマンド接続だけでなく、常時接続やキルスイッチなどいろいろあり、複雑です。
自分が期待した通りに動作しなかったり、邪魔になったりすることもあるでしょう。
信頼性は低い
セキュリティという観点から言えば、オンデマンド接続の効果は非常に限定的です。
プライバシーや匿名性を重視するのであれば、オンデマンド接続だけに頼ることは危険です。
オフにするとどうなる?
オンデマンド接続をオフにすると、VPNアプリで手動操作する必要があります。
ただし、使用するVPNアプリによっても挙動が変わってくるので、オンにした場合とオフにした場合でどのような動作になるのか確認し、自分に合っている方を選ぶことをおすすめします。
セキュリティのことを考えればオンにした方がいいですが、上記の通り、多少マシというだけです。
オンデマンド接続をオフで使用しても、全然問題ないと思います。
iPhoneは挙動がよく分からない
ここまで説明してきて何なのですが、正直iOSのオンデマンド接続は、機能の幅が狭すぎてよく分かりません。
私がいろいろ試したところ、オンデマンド接続が発動する条件は、「インターネット接続が切れた状態から、接続状態に変わった時」のみだと思います。
つまり、デバイスの電源を入れた時や、スリープから復帰した時に、VPNに自動接続されます。
しかしその後、VPNを手動でオフにした場合は、インターネット接続は切れていないので、オンデマンド接続は発動しません。
オンデマンド接続を再度発動させるには、インターネット接続を切り、再接続する必要があります。
この辺りの挙動が分かりにくく、結局全部VPNアプリで制御した方がいいということになるので、中途半端だなぁという印象です。
Androidは結構使える
一方、Androidの「常時接続」と「VPN以外の接続をブロック」を両方オンにすると、VPN接続が切れた時にインターネット接続も切れるので、とても分かりやすいです。
「常時接続」だけだと、やはり中途半端なので、使用するなら両方オンにすることをおすすめします。