ロシアのApp Storeから複数のVPNアプリが削除されたことが話題となっています。その背景と注意点について解説します。
Appleがロシア政府の要望を受けVPNアプリを削除
Red Shield VPNのXポストによると、「ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁(Roskomnadzor)」の要請を受け、Red Shield VPNのアプリがApp Storeから削除されたとのことです。
また、同社以外のVPNアプリも削除されたようです。
削除されたのはロシアのApp Storeからで、日本や他の国では引き続き利用できる状態です。
Appleは、「違法なコンテンツを取り扱っている」という削除要請を受けたと回答しています。
ロシアのVPN規制は今更ではある
ロシアでVPNが規制されているのは今に始まったことではありません。
2023年10月には、2024年の4月からVPN規制するよ、という通達も出していますので、計画通りというか、むしろ遅れている状態です。
Russia plans to try to block VPN services in 2024 - senator
VPNだけでなく、Facebook、Instagram、WhatsAppなどへの規制も言及されていますので、2022年のウクライナ侵攻に関連して、世論形成を意識してのことと思われます。
逆に言えば、VPNは政府の情報統制から身を守る、有効なツールであるということです。
Appleは弱腰
このような政府の働きかけに対して、Appleはすんなりと従う傾向にあります。
中国でも同様に、政府からの要請で「WhatsApp」や「Telegram」などのアプリを削除しています。
Appleとしては、ハードを売ることが一番重要なので、そのビジネスマーケットを失いたくないということなのでしょう。
中国政府が国のインターネット通信全体を検閲しているのはよく知られていることで、VPNも規制対象となっています。
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言論の自由を守るには
利益を追求する営利団体である以上、政府の意向に逆らうのは難しくなります。
そのような言論統制に立ち向かっている非営利団体を、3つご紹介します。
VPN Gate
「VPN Gate」は、日本の筑波大学が運営するプロジェクトで、世界中のボランティアVPNサーバーに無料で接続することができます。
VPN Gateの目的は、今回のロシアのように、政府による検閲を回避し、インターネットの情報にアクセスできる環境を提供することです。
ただし、ログを最低3ヶ月保存するなど、匿名性を意識したものではないので注意が必要です。
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Torプロジェクト
「Torプロジェクト」は、匿名でインターネットに接続できることを目的とした非営利団体で、「Tor」を開発しています。
Torはランダムに選ばれた多層ノードを経由することで、通信履歴の追跡を困難にし、高い匿名性を実現しています。
ただしその匿名性により、KADOKAWAグループへのランサムウェア攻撃など、犯罪に利用されるイメージが強いことも確かです。
KADOKAWA、ダークウェブ上への機密情報流出で注意喚起 警察も捜査を開始
正しく使用すれば、政府の検閲に対抗する、強力なツールとなります。
Torでファイルをダウンロードしたらばれる? VPNとの違いは?
Torというものを使えば、完璧な匿名性を実現できると聞いたことがあるかもしれません。しかしそれは本当でしょうか? この記事では、Torの仕組みとVPNの違いを解説し、実際の事件を元に、何がばれて、何が ...
電子フロンティア財団(EFF)
「電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation、 EFF)」は、インターネット上での言論の自由を守るために活動している非営利団体です。
様々な啓蒙活動をしたり、上記のTorのようなプロジェクトを支援したりしています。
フィンガープリントの問題にも注意喚起をしています。
フィンガープリントの意味と対策方法
2024/8/25 匿名
近年、フィンガープリントによる高精度な個人識別が問題となっています。フィンガープリントという言葉自体は様々な意味を持ちますが、インターネット上のブラウザから取得できる、クッキーレスフィンガープリントの ...
まとめ
ロシアの言論統制は、スターリン時代(1929~1953)からの伝統ですが、国際情勢の変化により、いっそう厳しくなっています。
日本も例外ではなく、現在まさに行なわれていることです。
そのような規制に対抗する知識やツールは、普段から持っておくとよいでしょう。